セッション情報 シンポジウム2(消化器病学会・消化吸収学会合同)

IBDに対する内科的治療とその限界

タイトル 消S2-6:

タクロリムスによる寛解導入治療後の予後と内科治療の現状

演者 横山 陽子(兵庫医大・内科(下部消化管科))
共同演者 樋田 信幸(兵庫医大・内科(下部消化管科)), 中村 志郎(兵庫医大・内科(下部消化管科))
抄録 潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis; UC)の治療はこの数年間で飛躍的な進歩を遂げ,2009年に保険承認されたタクロリムスも重症・難治症例に対して有効な寛解導入治療としてコンセンサスをえている.しかしタクロリムスにて寛解導入した後の維持については,しばしば難渋することが多く,内科医にとって今後の課題である.今回我々はタクロリムスにて寛解導入したUC患者を対象とし,その後の予後とUC再燃を予測する因子について検討しその治療戦略について考察した.
対象と方法:タクロリムスで寛解導入できたUC患者36例を対象とした.患者の平均年齢,罹病期間は36.2±14.5才,4.4±5.8年で,また疾患活動性はLichtiger’s clinical activity index(CAI)で評価し4以下を寛解とした.タクロリムス内服開始時の平均のCAI は10.3±3.3点であった.再燃群と非再燃群間でのCAI,Mayo,CRP値などの血液検査所見や併用薬,CMV感染の有無などの症例背景を比較し,更に再燃を予測する因子について多変量解析にて検討した.
結果:寛解導入後半年以内に再燃したのは38.8% (14/36)で,そのうち8人が手術となった.多変量解析の検討で,タクロリムスによる寛解導入時のCAI (P=0.008; 95%CI 0.301 0.853)とCRP (P=0.013; 95%CI 1.308-9.689) が有意な再燃を予測する因子となった.また,アザチオプリンの併用の有無では累積寛解維持率に有意差はなかった( P=0.122 Log Rank test).
結語:後ろ向きではあるが今回の検討でタクロリムス導入時の疾患活動性かつ炎症反応も高い症例は再燃を起こす可能性が高いことが予測された.同時にこのような症例はアザチオプリンにブリッジしても再燃する可能性が高く,タクロリムスにて寛解導入した後のその保持を目的とした治療は今後の課題である.
索引用語 タクロリムス, 潰瘍性大腸炎