セッション情報 シンポジウム2(消化器病学会・消化吸収学会合同)

IBDに対する内科的治療とその限界

タイトル 消S2-7:

難治性潰瘍性大腸炎に対するtacrolimusおよびinfliximab治療の短期および長期治療成績

演者 水野 慎大(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 松岡 克善(慶應義塾大・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【目的】潰瘍性大腸炎の中にはステロイドに対して抵抗性を示す症例や,ステロイドが有効であるものの離脱が困難なステロイド依存例といった,いわゆる難治性潰瘍性大腸炎が存在する.難治性潰瘍性大腸炎に対するsalvage治療として,tacrolimus (Tac)とinfliximab (IFX)の2剤が用いられている.しかし,両薬剤の使いわけに関しては一定のコンセンサスはないのが現状である.そこで今回の検討では,難治性潰瘍性大腸炎に対するTacとIFXの当院での治療効果を解析することで,両薬剤の位置づけや治療の限界を明らかとすることを目的とした.【方法】2009年7月から2013年3月までに当院でTacもしくはIFXにて治療を行った難治性潰瘍性大腸炎99例の経過を後ろ向きに解析した.99例のうちTacにて初回治療を行ったのは48例,IFXにて初回治療を行ったのは51例であった.疾患活動性はLichtiger scoreによって判定した.【成績】患者背景では,投与前のLichtiger scoreがTac群では平均12.3であったのに対して,IFX群では平均8.5と,Tacが重症例に対して用いられていた.投与3ヶ月後の有効率は,Tac群で66.7%,IFX群で51.1%であり,両薬剤間で差を認めなかった.2年後の治療成功率 (他の治療法への変更を要さなかった症例の割合)は,Tac群 47.7%,IFX群 46.1%とほぼ同等の成績であった.両薬剤ともに粘膜治癒 (Mayo内視鏡スコアで0または1)を達成した症例の長期成績は良好であったが,免疫調節薬の有無での長期成績への影響は認められなかった.TacからIFXへ移行した12例中5例 (41.7%),IFXからTacへ移行した11例中3例 (27.2%)が,その後の経過中に手術を要していた.【結語】Tac,IFXともに難治性潰瘍性大腸炎に対して半数以上の症例で有効であり,特に粘膜治癒を達成した症例では長期経過も良好であった.しかし,Tac,IFX両薬剤に抵抗する症例も存在し,現在の内科的治療の限界と考えられた.
索引用語 難治性潰瘍性大腸炎, salvage治療