セッション情報 シンポジウム2(消化器病学会・消化吸収学会合同)

IBDに対する内科的治療とその限界

タイトル 消S2-8:

難治性潰瘍性大腸炎に対するインフリキシマブ・タクロリムス治療の長期予後と課題

演者 遠藤 克哉(東北大病院・消化器内科)
共同演者 木内 喜孝(東北大病院・消化器内科), 下瀬川 徹(東北大病院・消化器内科)
抄録 【背景】難治性潰瘍性大腸炎(UC)に対するインフリキシマブ(IFX)とタクロリムス(Tac)の短期的治療成績は次第に明らかになりつつある.当科でもIFX,Tacともに投与8週後の臨床的寛解導入率は約50%程度と他施設とほぼ同等の成績である.しかし,両剤による寛解導入後の長期的な寛解維持成績は十分に明らかにされていない.一般に,IFXで寛解導入した場合には同剤の維持投与により,Tacで寛解導入した場合には保険認可3カ月間のTac投与後,チオプリン製剤による寛解維持が図られる.今回我々は,IFX・Tac導入後の長期予後を解析した.【対象】当科で難治性UCに対し,IFXまたはTacによる寛解導入を行った76例.(IFX群:40例,Tac群:36例).【方法】IFXまたはTac導入後の長期的な累積非再燃率をretrospectiveに解析した.再燃は再寛解導入療法を要した場合と定義した.【結果】IFX群40例中8例は一次無効で3回投与以内に投与を中止し,うち3例は手術となった (3回目投与以内の手術回避率:80%).IFX群40例中32例はIFX維持投与に移行し,観察期間内(中央値9.6カ月)での累積非再燃率は3カ月で100%,6カ月で100%,12か月で87%,24か月で81%であった.一方,Tac群36例中7例はTac無効であり,うち4例は手術となった(投与3カ月以内の手術回避率:88%).また1例は副作用で投与中止した.Tac群36例中25例は,3カ月間のTac投与の後,チオプリン製剤投与による維持療法に移行した.観察期間内(中央値5.5カ月)での累積非再燃率は3カ月で92%,6カ月で60%,12か月で37%,24か月で37%であり,IFX群と比べ有意に低かった(Log-rank test :p<0.001).【考察】IFX,Tacともに短期的手術回避率は80%以上であった.特にTacは短期的な手術回避率に優れる一方で,長期的治療成績はIFXに比し劣っていた.保険認可3カ月間のTac投与終了後の再燃が多く,同治療法による長期予後の改善には限界があると考えられた.3カ月以降のTac維持投与が可能となれば,長期予後は改善する可能性があると期待される.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 長期予後