セッション情報 |
シンポジウム2(消化器病学会・消化吸収学会合同)
IBDに対する内科的治療とその限界
|
タイトル |
消S2-9:難治性潰瘍性大腸炎に対する,タクロリムスの短期・長期治療成績と手術予測因子について
|
演者 |
高津 典孝(福岡大筑紫病院・消化器内科) |
共同演者 |
平井 郁仁(福岡大筑紫病院・消化器内科), 松井 敏幸(福岡大筑紫病院・消化器内科) |
抄録 |
【背景と目的】タクロリムス(Tac)の難治性潰瘍性大腸炎(UC)に対する長期治療成績や手術予測因子については知見に乏しい.今回,難治性UCに対するTacの短期・長期治療成績と手術予測因子について明らかにすることを目的とした.【方法】対象は2004年から2012年にかけて,当院にてTacによる治療を行った難治性UC患者66例.内訳は年齢中央値39歳,罹病期間中央値43ヵ月, DAIスコア中央値11.検討項目は,1.短期治療成績: 治療前後のp-DAIスコアを用いて判定,6週後のp-DAIスコア≦1を寛解,各スコアがすべて改善するも≦1とならない場合を改善,それ以外を無効とし,寛解+改善=有効として有効率を算出した.2.長期治療成績:全対象の累積非手術率をKaplan-Meier法にて算出した.また,短期手術回避例を対象に短期治療成績別に累積非手術率を算出し比較した.3.短期手術に影響する因子の検討:短期手術例と短期手術回避例のTac導入時の臨床背景,検査値,内視鏡所見を比較し多変量解析を施行した.【結果】1.Tac開始6週後,寛解19例,改善29例,無効18例であり,短期有効率は48例/66例(73%)であった.無効18例中10例は,Tac開始6週間以内に手術となっており,短期手術回避率は56例/66例(85%)であった.2.観察期間中央値32.8ヵ月で全対象66例のうち18例(27%)が手術となっており,98ヵ月後の累積非手術率は67%であった.短期有効例48例の累積非手術率は86%(98ヵ月後),短期無効例8例の累積非手術率は33%(69ヵ月後)であり,短期有効例は有意に累積非手術率が高かった(p=0.026).3.多変量解析の結果,深掘れ潰瘍を有することが短期手術のリスク因子となることが判明した(オッズ比13.4,95%CI:1.5‐117.2).【結語】Tacは短期的には70%に有効であったが,長期的には約1/3が手術となっていた.深掘れ潰瘍を有することが短期手術のリスク因子で,Tacの短期反応性が悪いことが長期手術のリスク因子であった.以上より,Tac使用に際し上記因子を考慮して評価を行うことが重要と考えられた. |
索引用語 |
潰瘍性大腸炎, タクロリムス |