セッション情報 シンポジウム2(消化器病学会・消化吸収学会合同)

IBDに対する内科的治療とその限界

タイトル 消S2-12:

難治性潰瘍性大腸炎に対する抗菌薬多剤併用(ATM)療法における手術率と手術症例の検討

演者 加藤 公敏(日本大・総合内科)
共同演者 佐藤 秀樹(日本大板橋病院・消化器・肝臓内科), 増田 英樹(日本大・総合外科)
抄録 【目的】我々は,潰瘍性大腸炎(UC)に対する抗菌薬多剤併用ATM療法の有用性について報告してきた.今回,難治性UCを中心に,ATM療法の手術率と手術例について検討を行った.【方法】対象は,2004年以降ATM療法を受けたステロイド依存性31例,抵抗性5例の難治性UCを含む46例である(全大腸炎型29例,左側大腸炎型15例,直腸炎型2例で,重症5例,中等症37例,軽症4例).既存の治療に加えAMPC 1500mg,TC 1500mg,metronidazole 750mg/日の3剤(ATM)の2週間経口投与を行い,投与12ヶ月以降,可能な症例では72ヶ月まで経過観察を行った.これらの症例について,手術率と手術に至った症例の検討を行った.また,Lichtigerスコアをもとに改善率(スコア3点以上減少),臨床的寛解率(スコア4点以下),ステロイド離脱率も検討した.【成績】12ヶ月後の改善率は76.1%(35/46)で,寛解率は56.5%(26/46)であり,24ヶ月後の改善率,寛解率は77.7%(35/45)であった.初回のみおよび複数回の治療を行った群をあわせて,48ヶ月後の改善率,寛解率は89.1%(33/37)であった.転院や手術例を除いて,60,72ヶ月後での寛解率は,それぞれ86.7%(26/30),90.5%(19/21)であった.ステロイド離脱率は12ヶ月で75%と高く,その後の抗菌剤再投与例を含め大部分の症例で離脱が可能だった.再燃例では抗菌剤再投与により改善がみられた.この間,ステロイド抵抗性,白血球除去療法に不応などで手術予定であった4例がATM療法により手術が回避された.手術例は3例(7%)で,(1)ステロイド離脱後2年以上寛解ののち,服薬コンプライアンス不良で中毒性巨大結腸症例,(2)ステロイド離脱後の再燃で重症化し肺炎を併発したため手術となった若年例,(3)複雑痔瘻を合併した重症例であった.【結論】ATM療法は,ステロイド離脱や寛解導入・維持への有用性のみならず,手術回避にも寄与する可能性が示唆された.
索引用語 難治性潰瘍性大腸炎, 抗菌薬多剤併用療法