セッション情報 シンポジウム2(消化器病学会・消化吸収学会合同)

IBDに対する内科的治療とその限界

タイトル 消S2-15:

手術例からみた高齢潰瘍性大腸炎症例に対する手術のタイミング

演者 小金井 一隆(横浜市立市民病院・外科)
共同演者 辰巳 健志(横浜市立市民病院・外科), 杉田 昭(横浜市立市民病院・外科)
抄録 近年増加している高齢潰瘍性大腸炎(UC)症例にも,内科治療に抵抗し,手術適応となる症例がある.これらでは周術期死亡が多い報告もあり,手術適応の判断が重要となる.【目的】手術症例からみた高齢UC症例に対する適切な手術のタイミングを検討し,明らかにする.【対象】70歳以上で大腸切除術を行った42例(男31,女11)を対象とした.発症時平均年齢は67歳,手術時平均年齢は75歳で,全大腸炎型35例,左側大腸炎型7例,手術適応は重症が19例,難治が13例,癌またはdysplasiaが10例であった.【方法】在院死亡例と非死亡例の2群間で手術時年齢,術直前の治療,術前入院日数,栄養状態,体重減少,手術に影響する併存症,手術適応,術式,手術時間,出血量を比較した.また,重症例で術前入院日数と予後の関連をみた.【結果】在院死亡例は6例(14.3%)あり,非死亡例36例と比較した.手術時年齢は78歳と74歳であった.術直前治療は,ステロイド使用例が100%と61%で,使用例の1か月平均使用量は882mgと814mg であった.CAP施行例(33%と35%),IFX使用例(それぞれ17%),免疫調節薬使用例(0%と19%)に差はなかった.術前入院日数は38日と25日,血清アルブミン値は2.4g/dlと3.0g/dl,体重減少例は88%と72%,併存症合併例は83%と44%と,死亡例で術前入院が長く,栄養状態が悪く,併存疾患合併例が多い傾向にあった.手術適応では重症,難治,癌・dysplasiaの頻度は67%, 17%, 17% と42%,33%,25%. IACA,直腸切断術の割合は50%と33%,17%と38%,平均手術時間は260分と240分,出血量は498gと537gで差はなかった.重症例のうち術前入院日数14日以内で手術を行った7例と15日以上で手術を行った12例では死亡率は14%と25%,非死亡例の術後平均在院日数は47日と95日で,後者で不良あった.【結論】高齢UC手術症例の予後には,治療内容より併存症の有無,栄養などの全身状態と入院日数が影響する.このため早期に手術適応の判断をすべきで,重症例では14日以内が適切と考えられた.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 高齢者