セッション情報 シンポジウム2(消化器病学会・消化吸収学会合同)

IBDに対する内科的治療とその限界

タイトル 消S2-16追:

潰瘍性大腸炎術後慢性回腸嚢炎発生に対する病理組織学的予測因子の検討

演者 荒木 俊光(三重大大学院・消化管・小児外科学)
共同演者 大北 喜基(三重大大学院・消化管・小児外科学), 楠 正人(三重大大学院・消化管・小児外科学DELIMITER三重大大学院・先端的外科技術開発学)
抄録 【背景】回腸嚢炎は潰瘍性大腸炎(UC)に対する大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術(IAA)後に最も多く認められる合併症の一つである.当教室ではIAA時のCRP値が回腸嚢炎の予後に関連することを報告してきた.【目的】切除組織病理学的評価から慢性回腸嚢炎の発生予測因子を検討する.【方法】2003年1月から2011年12月までに当教室で活動期にIAAが施行されたUC180例のうち,肛門からの排泄再開後1年以上経過観察された149例を対象とした.回腸嚢炎の診断はmodified pouchitis disease activity index≧5とし,慢性回腸嚢炎の定義は年3回以上再燃を繰り返す,または4週間以上抗生剤治療を要する症例と定義した.病理組織は直腸,S状結腸,下行結腸,横行結腸,上行結腸,盲腸におけるHE染色により,(1)潰瘍,(2)陰窩膿瘍,(3)単核球浸潤率,(4)単核球浸潤範囲,(5)好酸球浸潤,(6)病変範囲をスコア化し評価した.【結果】回腸嚢炎は52/149例(34.9%)に認められ,うち慢性回腸嚢炎は26例(50.0%)であった.発症時期中央値は12か月(0―96か月)であった.切除標本における単核球浸潤の程度および範囲が高いこと,かつ好中球浸潤の程度が低いことが,慢性回腸嚢炎発生の有意な予測因子であった(OR=3.1, 95%CI;1.3―7.8, P=0.01).【結論】IAA時の大腸における単核球浸潤の程度と好酸球の非浸潤の所見が慢性回腸嚢炎発生との間に有意な関連が認められた.このことは,内科的治療方針決定にも有用な情報の一つになると考えられた.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 回腸嚢炎