セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的悪性度評価を加味した肝細胞癌治療戦略

タイトル 肝S3-2:

術前画像診断による”高悪性度”結節の同定及び治療戦略

演者 川村 祐介(虎の門病院・肝臓センター)
共同演者 小林 正宏(虎の門病院・肝臓センター), 池田 健次(虎の門病院・肝臓センター)
抄録 【目的】肝細胞癌(HCC)に対する局所治療においては,治療法選択に強く影響を与える進行した再発形式を呈する症例を経験する. 今回,Dynamic-CT造影パターンより, 局所治療前にこのような“生物学的悪性度”の高い結節を除外し, 再発率を抑える治療戦略が組み立てられるか検討した.
【対象・方法】2005年1月より2011年12月までに単発・3cm以下のHCCに対して初回治療として根治的肝切除が施行された106症例, ラジオ波焼灼療法(RFA)が施行された203例を対象に検討.
造影パターンについては,Type-1:乏血性, Type-2:均一多血, Type-3:不均一多血, Type-4:不整リング状と分類.
肝切除,RFA両治療間での背景の比較:HBV,HCVの比率は 34:14%, 56:75%, 以下中央値(最小-最大)で示すが,年齢63(35-81):70(37-83),アルブミン 3.7(2.5-4.7):3.6(2.6-4.5)g/dl, 総ビリルビン 0.9(0.3-2.2):0.9(0.3-2.7)mg/dl, AST 39(11-185):48(16-196)IU/L, 腫瘍径 20(10-30):16(7-30)mm, PIVKA-II 23(9-1,648):18(5-314) AU/L, 腫瘍局在(被膜下病変)80%:39%で両群間に有意差を認めた.
再発形式は再発時の治療方法選択に大きく影響を与える進行同亜区域再発(腫瘍数4個以上もしくは門脈浸潤, 他臓器転移をともなった同亜区域再発)につき検討.
【成績】
(1) 肝切除, RFA施行後の進行同亜区域再発と治療前造影パターンとの関係
進行同亜区域再発は肝切除, RFAそれぞれType-1; 7:0%, Type-2; 2:2%, Type-3; 3:3%, Type-4; 13:70%でありRFAでは有意にType-4での進行同亜区域再発が多かった(P<<0.001)
(2)RFA施行の進行同亜区域再発に寄与する因子の検討
進行同亜区域再発に寄与する因子につき多変量解析を施行した結果, 治療前造影パターンがType-4であることが唯一の独立予測因子であった(Hazard Ratio 56.29 P<0.001).
【考案】Dynamic-CTにおいてType-4 patternを呈するHCCに対してはRFA治療後の進行同亜区域再発が多く,再発率を低下させるために肝切除を含めた腫瘍に直接触れることなく広範囲の切除,焼灼が可能な治療法選択が必要と考えられた.
索引用語 生物学的悪性度, 肝細胞癌