セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的悪性度評価を加味した肝細胞癌治療戦略

タイトル 肝S3-3:

ミラノ基準内肝細胞癌症例における高感度AFP-L3分画の臨床的有用性

演者 田村 康(新潟大大学院・消化器内科学)
共同演者 若井 俊文(新潟大大学院・消化器・一般外科学), 青柳 豊(新潟大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】
AFP-L3分画は肝細胞癌(HCC)の診断・予後予測に用いられている.今回,HCC症例の術前高感度AFP-L3分画と生命予後の関連性を検討し,治療法選択の指標としての有用性について検討したので報告する.
【方法】
当院で根治的治療を施行したミラノ基準内HCC症例166例(ラジオ波焼灼治療91例,肝切除75例)を対象とした.カットオフ値をAFP;20ng/ml,AFP-L3分画;10%,PIVKAII;40mAU/mlとして,治療前血清中マーカー測定値の多寡による患者生命予後を治療法別に検討した.更に治療後生命予後に影響を与える因子について治療法別にCoxモデルを用いて評価検討した.
【結果】
従来法測定法でAFP-L3分画評価可能症例(0.5%以上)は166例中59例(36%)であったのに対し,高感度測定法では166例中126例(76%)であった.また,診断的意義を有すると考えているAFP-L3 値7%以上の症例は,従来法で166例中37例,高感度法では74例であった.背景因子の比較では穿刺治療群の症例は高齢であり,肝切除群はより大きい腫瘍径であった.治療後平均観察期間1334日における,治療法別の生命予後予測因子をCox回帰モデルで解析した結果,穿刺治療群では,高感度AFP-L3高値(p=0.001)が有意な予後因子であった.さらに,AFP-L3分画の多寡により2群に分けて累積生存率をLog-rank検定で比較した結果,AFP-L3分画 10%以上の群に累積生存率の有意(p=0.001)な低下を認めた.肝切除群ではAFP-L3分画の多寡と生存率の有意な関連は認めらなかった.
【結論】
従来法で評価困難であったミラノ基準内AFP低濃度症例において高感度AFP-L3分画測定法による評価が可能であった.そして,穿刺治療選択AFP-L3分画高値群では生命予後が不良であったことよりL3分画高値症例は,肝予備能等が許す限り外科的切除を選択するべきであると考えられた.
索引用語 AFP-L3, AFP