セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的悪性度評価を加味した肝細胞癌治療戦略

タイトル 肝S3-4:

小肝細胞癌肝切除例の早期再発リスクに関する臨床病理学的検討

演者 小林 知樹(広島大病院・消化器・代謝内科)
共同演者 相方 浩(広島大病院・消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大病院・消化器・代謝内科)
抄録 【目的】3cm以下小肝細胞癌(肝癌)切除例において,術後早期再発リスク因子を明らかにし,これらのリスク因子に対する術前診断能について検討する.【対象と方法】2003年10月から2011年3月までに初回肝癌治癒切除術を行った477例のうち,初発,単発,3cm以下,画像上脈管侵襲無し,慢性肝炎またはChild-Pugh A,術前TACEなし,をすべて満たした67例を対象とした.男性/女性:45/22例.年齢67歳.HBV/HCV/NBNC:15/44/8例.腫瘍径20mm (6-30),AFP 6.0ng/ml, DCP 28mAU/ml,AFP/size比0.4(中央値).全例,術前に血管造影下CTを含む総合画像診断により,結節の形態および濃染の評価を行い,臨床病理学的特徴と術後早期再発リスクに関連する因子について解析した.早期再発は,術後2年以内の多血性再発と定義した.【結果】1)切除病理診断は,肉眼形態非単純結節型(non-SN)31.3%(n=21),分化度:高/中/低分化型=12/82/6%,脈管侵襲陽性12%(n=8),im陽性3%(n=2),fc-inf陽性61%(n=41).術後生存率1/3/5年=100/89/72%,無再発生存率1/3/5年=83/59/39%.早期再発は19例(28%).早期再発に寄与する独立因子として,術前因子は腫瘍径≧20mm(OR5.6, 95%CI1.36-23.06, p=0.017),病理学的因子は肉眼形態non-SN(OR5.6, 95%CI1.16-27.07, p=0.032)が抽出された.2)病理学的肉眼形態non-SNに寄与する術前独立因子として,AFP/size比>5(OR4.7, 95%CI1.03-21.53, p=0.045),画像境界不明瞭(OR15.0, 95%CI3.68-61.29, p=0.0001)が抽出された.病理肉眼形態non-SNについて,術前画像診断による予測一致率は48%,腫瘍径20mm以下0%,20mm超65%であり,20mm以下で一致率は低かった.術前画像診断にAFP/size比>5を加味して予測一致率を解析すると,67%(20mm以下25%,20mm超76%)に上昇した.【結語】病理肉眼型非単純結節型は,小肝癌切除後早期再発リスク因子であり,術前診断として,画像形態診断とAFP/size比>5の組み合わせによる診断が有用である.
索引用語 肝細胞癌, 早期再発