セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的悪性度評価を加味した肝細胞癌治療戦略

タイトル 肝S3-5:

ラジオ波焼灼療法後脈管侵襲を認めた肝細胞癌に関する検討

演者 浅岡 良成(東京大大学院・消化器内科学)
共同演者 建石 良介(東京大大学院・消化器内科学), 小池 和彦(東京大大学院・消化器内科学)
抄録 【背景】肝細胞癌(HCC)における脈管侵襲の発生は,生物学的高悪性度を示唆する代表的eventである.脈管侵襲の予測及び診断における腫瘍マーカーの役割を明らかにする事を目的とした.【方法】1999年から2008年まで当院で初発HCCに対して根治的ラジオ波焼灼療法(RFA)を施行した1057例を対象とした.カプランマイヤー法にて,RFA後の脈管侵襲の発生頻度,脈管侵襲発生後の生存率を算出した.また,脈管侵襲のリスクファクターをCox比例ハザードモデルで解析した.【結果】経過中,再発治療も含め総計6075病変に対して3345回のRFAが行われ,97例(9.2%)に脈管侵襲が発生した.80例が門脈侵襲,17例が胆管侵襲, 4例が肝静脈への侵襲であった.治療部位からの発生は40例であった.脈管侵襲の発生率は,1年で1.1%,3年で5.9%,5年で10.5%であった.単変量解析では,初回治療時の病変数,最大腫瘍径,腫瘍マーカー(AFP,DCP,AFP-L3分画)が有意に脈管侵襲の発生に寄与していた.多変量解析でも,最大腫瘍径,腫瘍数が有意に関与していたが,初発時のDCP,AFP-L3の値も独立した脈管侵襲のリスクファクターであった(PIVKA-II>200mAu/mLのHR 3.22, p<0.0001,L3分画>15%のHR 1.76, p=0.025).脈管侵襲発生時の腫瘍マーカーの値は,AFP>200ng/mL:55%,PIVKA-II>200mAU/mL:57%,L3>15%:29%であった.脈管侵襲発生後の生存率は,1年で33.1%,3年で10.6%,5年で6.4%であった.【結論】初発病変数や最大腫瘍径のほかに,腫瘍マーカー(PIVKA-II, AFP-L3分画)も脈管侵襲発生の独立したリスクファクターであった.特にPIVKA-II高値HCC例は,RFA後高率に脈管侵襲を認めた.
索引用語 ラジオ波焼灼療法, 脈管侵襲