抄録 |
【目的】進行肝細胞癌に対する治療法としてソラフェニブ(S群)が多く用いられるようになったが, 低用量シスプラチン+5FU療法(LFP群)とどちらを選択するかの判断基準は明確ではない. 本研究の目的は,一般臨床パラメーターに血清中血管新生サイトカイン量を新たな因子として加え, 有効な治療選択法を見出すことである. 【方法】対象は2003年以降当科及び協力施設に進行肝細胞癌で入院し治療を受けた178症例(S群120症例,LFP群58症例). これらの症例のAFP, AFP-L3, PIVKAIIを含む14の臨床パラメーター及びAngiopoietin2, VEGF, HGFを含む8つの血清中血管新生サイトカイン発現とTTP, OSとの関係を比較検討し,治療選択因子を解析した.サイトカインについては発現量の中央値で高値群と低値群に分け, 高値のサイトカインが4個以上の症例を高発現群, 3個以下の症例を低発現群と定義した. 【成績】年齢の中央値は68歳, HBV/HCV/NBNC=50/91/37, Child-Pugh class A=143(80%), 肝外転移例86(48%), VP2以上の脈管浸潤例77(43%), 観察期間の中央値は212日であった. S群はLFP群と比較し肝外転移が多く(58% vs 28%), 脈管浸潤が少なかった(33% vs. 64%). S群のTTPに関与する因子解析では, サイトカイン高発現群のみが危険因子として抽出された(RR, 1.98; 95%CI, 1.29-2.81). LFP群は肝外転移(RR, 2.93; 95%CI, 1.51-5.54)とPIVKAII高値(RR, 2.30; 95%CI, 1.25-4.34)が危険因子であった. この3因子のうち, PIVKAII値と血清中サイトカイン(高値群/低値群)の違いが, ソラフェニブかLFPという治療法の選択によりTTPが変化する因子であった. 特にサイトカイン高発現群かつPIVKAII低値ではLFP群が(P=0.004), サイトカイン低発現群かつPIVKAII高値ではS群のTTPが良好であった(P=0.084). OSでの検討でも, サイトカイン高発現群かつPIVKAII低値ではS群が予後良好であった(P=0.027). 【結論】進行肝癌の治療選択に血清サイトカイン及びPIVKAII値を加味することにより, 予後延長につながる可能性が示唆された. |