セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的悪性度評価を加味した肝細胞癌治療戦略

タイトル 肝S3-7:

ラジオ波焼灼術の再発様式から検討した肝細胞癌の悪性度診断

演者 安井 豊(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 玉城 信治(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】顕微鏡的門脈侵襲を有する症例のラジオ波焼灼術(RFA)は同区域再発のリスクが高いが,画像診断で治療後の予後予測をたてることは困難である.今回,画像所見と病理・再発様式を含めた治療後経過を比較し,悪性度診断に有用な画像診断につき検討した.
【方法】2008年以降にMDCT・EOB-MRI・Sonazoid造影超音波検査を施行し,病理学的に肝細胞癌の診断を得た3cm以下の158例165結節を対象とし,腫瘍分化度と画像所見を比較した.また,このうち初発肝癌RFA施行120例につき,治療後の再発様式と画像所見とを比較した.画像所見は動脈多血有無,EOB-MRI肝細胞相,T2強調像,拡散強調像(DWI),造影超音波Kuppfer相,腫瘍微細血管パターン(既報のごとくfine(F)・vascular(V)・irregular(I)に分類し,FとVIに大別)について検討した.また,同時期の3cm以下初発肝癌肝切除施行11例について画像所見と病理所見を比較検討した.
【結果】全体で高分化型87結節・中分化型69結節・低分化型12結節であった.高分化型に対し中低分化型に有意に関与する画像所見は腫瘍径15mm超(p=0.0006),多血性(p<0.0001),DWI 高信号(p<0.0001),Kupffer相低エコー(p<0.0001),微細血管バターン VI(p=0.001)であった.RFA施行120例は平均腫瘍径 18.4mm,平均観察期間1.5年で同区域再発32例,再発無しもしくは他部位再発88例であった.同区域再発は高分化型に比し中低分化型で多い傾向にあり(13/65 vs. 19/55, p=0.07),同区域再発に関与する画像所見は腫瘍径20mm超(p=0.005),DWI 高信号(p=0.02)であった.微細血管パターンFの13例は同区域再発を認めなかったが,VI 11例中3例に同区域再発を認めた(p=0.08).肝切除施行11例は平均腫瘍径23.5mmで全例多血・DWI高信号であり,微細血管パターンVIはFに比して単純結節型以外が多く(75% vs. 33%),顕微鏡的脈管侵襲例が多かった(65% vs. 33%).
【結論】肝細胞癌の治療選択においてDWI,造影超音波Kupffer相,微細血管構築パターンによる悪性度診断が再発を含めた予後予測に有用である.
索引用語 肝細胞癌, 悪性度