セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的悪性度評価を加味した肝細胞癌治療戦略

タイトル 肝S3-8:

PET/CTによる肝細胞癌の悪性度診断と治療への応用

演者 波多野 悦朗(京都大・肝胆膵・移植外科)
共同演者 東 達也(滋賀県立成人病センター研究所), 上本 伸二(京都大・肝胆膵・移植外科)
抄録 【背景】我々は肝細胞癌診療においてFDG-PETおよびPET/CTを重要視してきた.これまで,肝切除症例の予後予測におけるFDG-PETの有用性を後向き研究(World J Surgery, 2006),前向き研究(Clin Cancer Res, 2007)で明らかにしてきた.また,分化度予測,抗がん剤耐性に関与するP-glycoproteinの発現予測(Int J Oncol, 2009)にもFDG-PETは有用であった.さらに,生物学的悪性度考慮した肝細胞癌治療戦略の確立を目指し以下の検討を行なった.【方法】1. 非手術療法後の予後予測,2. 増殖活性との関連性,3. 再発パターンと時期の予測に関して検討した.【結果】1. 非手術療法(TACE24例,肝動注31例,RFA5例,全身化学療法7例)施行1ヶ月以内のFDG-PETにおけるSUVの高集積群は低集積群に比べ予後不良(328 vs. 608 days)で,多変量解析で有意な予後因子のひとつであった(Eur J Nucl Med Mol Imaging, 2010).2. 悪性度の指標としてKi-67 labeling index (LI) に着目し,高LI群は,予後不良で,GLUT-1高発現,PKM2mRNA高発現,FDGは高集積で,一方VEGFは低発現でmicro vessel densityも低値であった(J Hepatol, 2011).3. 術前PETを受け肝切除術が施行された前治療のないHCC 63例を対象に腫瘍と非腫瘍集積の比(TNR)と術後初回再発形式(ミラノ基準MC外再発とMC内再発および再発なし)・時期(1年以内,1年以降の再発および再発なし)との関係を検討したところ,多変量解析にてTNR値はMC外および1年以内の再発の唯一の独立した術前予測因子であった (Ann Surg Oncol, 2012).【結語】手術以外の治療の予後予測にもFDG-PETは有用で,積極的な追加治療の適応決定に有用である.増殖活性が増すに連れて,腫瘍は血管新生より糖代謝に依存する.TNR高値例は積極的な術後補助療法の適応と考え,TNR>2の症例を対象としたsorafenib術後補助療法の第II相試験(MISORA)を開始した.
索引用語 生物学的悪性度, 補助療法