セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的悪性度評価を加味した肝細胞癌治療戦略

タイトル 外S3-9:

小肝癌治療に対する提言:径2 cm以下肝細胞癌における血管侵襲・肝内転移の危険因子

演者 山下 洋市(九州大・消化器総合外科)
共同演者 調 憲(九州大・消化器総合外科), 前原 喜彦(九州大・消化器総合外科)
抄録 【はじめに】肝癌診療ガイドラインでは,肝癌の悪性度を腫瘍径のみで判断しているが,腫瘍径2 cm以下の肝癌でも,局所浸潤を認める局所浸潤癌と考えられる症例がある.【対象と方法】1994年から2010年までの最大腫瘍径2.0 cm以下の初発単発小肝癌切除例149例を対象とした.組織学的に局所浸潤(vp/vv/b/im)陽性症例の危険因子を臨床病理学的に検討した.また,局所浸潤陽性小肝癌切除例の予後を検討した.【結果】149例の小肝癌切除例のうち,局所浸潤陽性の小肝癌は43例(28.9%)であった.その独立危険因子は,浸潤型肉眼型(多結節癒合型または単結節周囲増殖型),PIVKA-II>100 mAU/mL,低分化型の3因子であった.小肝癌切除例におけるPIVKA-II>100 mAU/mLの局所浸潤に対する正診率は53.5%,陽性的中率は79.3%であった.また,術前US/CT/MRIが確認できた小肝癌切除例(107例)における肉眼型の正診率は25.0%,陽性的中率は62.5%であった.局所浸潤陽性小肝癌群(43例)の切除後予後は,陰性群(106例)と比較して,無再発生存率が有意に不良であった.また,局所浸潤陽性小肝癌43例に対して,13例(30.2%)に系統切除が施行されていたが,系統切除群による予後の改善を認めなかった.一方,tw≧5 mm群(20例)はtw<5 mm群(23例)と比較して,切除後無再発生存率が有意に良好であった.【結論】腫瘍径2 cm以下の小肝癌でも,その28.9%に局所浸潤因子を伴っていた.その独立危険因子は,「浸潤型肉眼型」,「PIVKA-II>100 mAU/ml」,「低分化型」の3因子であった.径2 cm以下の小肝癌でも,PIVKA-II>100 mAU/mlなど術前に局所浸潤の危険因子ありと考えられる場合は,充分に切除マージンをとった肝切除を選択すべきであると考える.
索引用語 小型肝細胞癌, 局所浸潤