セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的悪性度評価を加味した肝細胞癌治療戦略

タイトル 肝S3-10:

腫瘍形態に基づく肝細胞癌の遺伝子解析と特異的分子標的による治療戦略

演者 田中 真二(東京医歯大・肝胆膵・総合外科)
共同演者 小川 康介(東京医歯大・肝胆膵・総合外科), 有井 滋樹(東京医歯大・肝胆膵・総合外科)
抄録 【目的】固形癌の腫瘍形態が悪性度と相関することは古くから知られているが,その分子生物学的意義には不明な点が多い.我々は肝細胞癌の肉眼分類:単純結節型,単純結節周囲増殖型,多結節癒合型の解析により悪性度を評価した上で,特徴的な遺伝子発現パターンを見出し,その分子標的としての意義を解析したので報告する.【方法】肝細胞癌手術症例を用いて,肉眼分類に基づいた臨床病理学的解析,網羅的遺伝子解析を行ない,主成分解析およびp値分布法によって遺伝子発現パターンを検出した.その特異的遺伝子の特性を解析し,ヒト肝癌細胞株で検証した.【成績】肝細胞癌の術後生存率,無再発生存率は単純結節型が良好であったが,多結節癒合型が最も不良であった.DNAマイクロアレイ解析では,多結節癒合型は単純結節型, 単純結節周囲増殖型とは全く異なる特徴的な遺伝子発現パターンを呈し,多変量解析により幹細胞マーカーEpCAMと有意に相関することを見出した.さらにEpCAM発現が多結節癒合型肝細胞癌の予後規定因子であることを明らかにした.この結果は前向き研究を用いても実証可能であった.さらにヒト肝癌EpCAM+細胞株を用いた解析では,EpCAM標的剤によってヒト肝癌の幹細胞性が抑制されることを見出した(スフェア形成能,癌幹細胞マーカー).EpCAM標的剤と5FUのin vitro併用効果を確認し,マウス肝癌モデルを用いた顕著なin vivo腫瘍抑制効果を検出した.【結論】予後不良な多結節癒合型肝細胞癌は特異的遺伝子発現パターンを呈し,幹細胞マーカーEpCAMと有意に相関した.ヒト肝癌細胞株の解析によりEpCAM標的に対する新しい肝細胞癌治療戦略の可能性が示唆された.
索引用語 肉眼分類, 幹細胞