セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的悪性度評価を加味した肝細胞癌治療戦略

タイトル 外S3-11:

肝細胞癌切除症例におけるRFAの影響 -遺伝子発現に着目した腫瘍悪性度の検討-

演者 岩橋 衆一(徳島大・外科)
共同演者 島田 光生(徳島大・外科), 石川 大地(徳島大・外科)
抄録 【はじめに】ラジオ波熱凝固療法(RFA)は肝細胞癌において,安全性と良好な治療成績が報告されているが,腫瘍径が大きい場合や脈管に近い場合は,手術治療と比較して局所制御性に劣るという報告がなされている.今回,初発肝細胞癌に対してRFA治療後に局所再発しサルベージ手術を施行した症例と,初回肝切除症例の予後や癌部の遺伝子発現を比較し, RFA局所再発が与える影響につき検討した.【対象と方法】2005年4月から2012年12月に当科で肝切除を行った症例のうち,RFA後の局所再発切除症例10例(RFA群),および初回手術症例119例(non-RFA群)を対象とした.検討1:予後を含む臨床病理学的因子,再発形式につき比較検討した.検討2:切除標本における癌部のHIF-1α,CD44,EpCAM mRNA発現を,RT-PCR法により比較検討した.【結果】検討1:患者背景に有意差を認めなかった.腫瘍因子では,RFA群で門脈侵襲の頻度が高く(80 vs 25%, p<0.01),低分化型の割合が高かった(40 vs 10%, p=0.02).RFA群はnon-RFA群と比べて初回治療からの生存率は悪い傾向にあり (3年生存率36.5 vs 74.6%, p=0.10),切除からの生存率は有意に不良であった (3年生存率34.9 vs 74.6%, p<0.01).また初回治療からの無再発生存率は両群間で有意差を認めなかったが,切除後の無再発生存率おいてはRFA群が有意に不良であった (3年生存率26.7 vs 45.5%, p=0.01).さらに切除後の肝外再発の頻度に関して,RFA群がnon-RFA群に比べ有意に高率であった.検討2:CD44のmRNA発現は両群間に有意差を認めなかったが,HIF-1α発現はRFA群で有意に高発現であり(5.8±4.8 vs 2.5±2.5, p=0.01),EpCAM mRNA発現はRFA群で有意に高値であった (10.3±19.9 vs 2.1±9.8, p=0.03).【まとめ】初回治療としてRFA治療を行い局所再発した症例は,サルベージ手術を行っても早期に再発を来たし制御不能となる可能性があり注意が必要である.その機序として,遺残した腫瘍細胞は低酸素環境を介して癌幹細胞様の特性を獲得し,腫瘍悪性度が上昇したと考えられた.
索引用語 RFA, 低酸素環境