セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的悪性度評価を加味した肝細胞癌治療戦略

タイトル 消S3-12:

肝細胞癌におけるmTORシグナル伝達機構と外科術後再発抑止のための治療戦略

演者 海堀 昌樹(関西医大・外科)
共同演者 坂口 達馬(関西医大・外科), 權 雅憲(関西医大・外科)
抄録 【目的】肝細胞癌においてmTORシグナルの異常活性化が高頻度に起こっている.肝癌組織においてmTORC1 (mTORとraptorとの複合体)およびmTORC2 (mTORとrictorとの複合体)の発現動態はこれまでに詳細に検討されていない.今回我々は,外科手術での肝癌組織摘出標本での癌部および非癌部でのこれら発現を検討,また最近では手術後にこれらシグナル発現動態に応じた治療戦略を開始している.【方法】1.肝癌根治切除(単発および腫瘍径5cm以下)46名を対象.肝癌摘出標本のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いてHE染色標本上での癌部位の同定,RNA抽出用のためNuclear Fast Red染色実施,癌組織切出,RNA抽出・cDNA合成,リアルタイムPCRでmTOR・Raptor・Rictor mRNA・EpCAM測定を実施.2.最近の手術時採取した癌部,非癌部検体をリアルタイムPCRで各遺伝子 mRNA測定.【結果】1.患者・手術時・病理学的因子すべて含めた37項目において術後無再発生存(DFS)および累積生存(OS)に対する予後因子を単・多変量解析を行った結果,DFSに対しては腫瘍部Riptor/Raptor mRNA ratioおよび術前AFP値が同定,OSは,腫瘍部mTOR mRNA発現量および術前血清albumin値が同定.2.最近3年間の肝癌切除症例において,腫瘍部Riptor/Raptor mRNA ratioおよびmTOR mRNA高発現症例に対して,mTORC2発現抑制を目的としたBCAA顆粒製剤を術後継続投与.投与症例はhistorical controlでの同遺伝子高発現およびBCAA非投与症例との比較ではDFSは有意差は得られないものの良好.【考察】肝癌摘出組織標本においてRiptor/Raptor mRNA ratio高値およびmTOR mRNA発現亢進は肝癌根治切除を行っても肝癌再発を繰り返し,予後不良であり,術直後よりの分子標的薬(mTOR阻害剤)による補助療法が必要であると考えられた.またBCAA顆粒製剤は動物実験にて,これら遺伝子発現を抑止することを我々は確認しており,現在肝癌術後患者にBCAA顆粒製剤を使用し,予後検討を行っている.
索引用語 肝癌肝切除, Riptor/Raptor