セッション情報 シンポジウム4(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

IgG4関連膵胆道疾患の診断と治療

タイトル 消S4-10追:

自己免疫性膵炎の治療―個別化治療の提案

演者 洪 繁(慶應義塾大・システム医学)
共同演者 佐伯 恵太(佐野厚生総合病院・消化器内科), 樋口 肇(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【目的】近年自己免疫性膵炎(AIP)の疾患概念が広まり,AIPに一般医の間でもステロイド治療(PSL)が広く行われるようになった.しかし,未だ治療開始のタイミングや投与量,投与期間などは専門家の間でも意見がわかれており,統一された治療法はない.IgG4関連疾患は全身疾患であるため,初発部位により消化器以外の医師が診療を行うことも多いが,ステロイド反応性は臓器により違いが大きく,治療法に対して意見が別れる理由の一つである.本研究では,最も感度の良い検査法であるセクレチン試験(ST)を用いて膵機能を評価し,最適な治療法について考察することを目的とする.【方法】症例は,自己免疫性膵炎と診断された28例を対象とした.そのうち18例は治療開始前にSTで膵機能を評価した.11例では治療開始3ヶ月後に,3例では治療12ヶ月後,2例は36ヶ月後にも再検した.【結果】治療前にSTを行った18例ではほとんどの症例で,液量(V),最高重炭酸塩濃度(MBC),アミラーゼ分泌量(AO)の3因子の低下を認めた.病変部位では,限局性病変は機能が保たれている症例が多く,びまん性病変では膵障害の程度が高度であった.膵障害軽度群と高度群を比較すると,高度群ではPSLによって機能回復は認めるものの,回復の程度は少なかった.治療開始後7年まで膵機能を追えた1例では,炎症の再燃時に機能低下を認め,再燃時には一旦改善した膵機能も再度悪化することが明らかとなった.【結論】AIPは患者ごとに診断時の臓器障害の程度が違っており,治療後に残存する膵実質量や残存膵内・外分泌機能,治療による臓器機能回復の程度が異なる.再燃の頻度やステロイド反応性なども症例ごとに異なり,更にAIPは比較的合併症の多い高年齢者に発症することから,患者ごとに残存膵機能,合併症などを考慮し,ステロイド投与量,投与期間などを決める個別化医療が重要である.
索引用語 自己免疫性膵炎, 外分泌機能障害