セッション情報 シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-

タイトル 吸S5-1:

食用油脂と甘味刺激によるglucagon-like peptode-2(GLP-2) 分泌の制御について

演者 佐藤 伸悟(防衛医大・2内科)
共同演者 穂苅 量太(防衛医大・2内科), 都築 義和(防衛医大・2内科)
抄録 <目的>Glucagon-like peptide-2 (GLP-2)は腸管粘膜の増殖作用を持つproglucagon由来のペプチドで, 近年, 機能不全を来たした腸管の再生に極めて有用であることが判明し, リコンビナントペプチドによる短腸症候群への臨床応用が進められている. GLP-2は主に小腸のL細胞より産生され, 管腔内の食物刺激によって増加する事が知られているが, 個々の栄養素についての検討はない. 今回我々は, ラットの小腸リンパ検体と小腸L細胞のモデルとされるヒト内分泌細胞NCI-H716を用いて, (1)小腸管腔内の油脂・糖質・甘味料刺激がGLP-2分泌に及ぼす影響, および(2)GLP-2分泌への甘味受容体の関与について検討を行った. <方法>Wistarラットの十二指腸に油脂・糖質・甘味料の各種をbolusで投与し2時間毎に胸管よりリンパを回収し, ELISA法にてGLP-2の分泌量を比較した. 同様にNCI-H716細胞にも脂肪酸・糖質・甘味料を添加し上澄みに含まれるGLP-2をELISA法により測定した. <成績>不飽和長鎖脂肪酸を多く含む油脂や炭水化物, また一部の甘味料で用量依存性にGLP-2分泌の増加が観測された. この現象はαリノレン酸・ブドウ糖・甘味料を添加したNCI-H716細胞でも再現された. またin vitroにおいて, 甘味受容体(T1R2/T1R3)の阻害剤とされるlactisoleを併せて添加したところ, αリノレン酸によるGLP-2分泌には影響を及ぼさなかったのに対し, 糖・甘味料によるGLP-2分泌を阻害した. <結論>今回の結果から, 脂肪酸と甘味刺激によるGLP-2分泌が異なる2つの経路により制御され, さらに甘味刺激によるGLP-2分泌には甘味受容体が関与している事が示唆された.
索引用語 GLP-2, 甘味受容体