セッション情報 シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-

タイトル 消S5-2:

NSAIDs起因性小腸粘膜傷害に対する成分栄養剤およびDPPIV選択阻害剤の効果

演者 井上 拓也(大阪医大・2内科)
共同演者 藤原 薫(大阪医大・2内科), 樋口 和秀(大阪医大・2内科)
抄録 【目的】NSAIDsは小腸に出血性の粘膜傷害を惹起することが知られている.腸管内栄養素は腸内分泌細胞からGLP-2分泌を刺激し,外因性GLP-2投与が腸粘膜保護作用を示すことが報告されているが,内因性GLP-2の役割については不明な点が多い.GLP-2はDPPIVによって速やかに分解されるため,我々はDPPIV阻害剤と成分栄養剤の併用が腸粘膜傷害に与える影響についてインドメタシン誘発小腸粘膜傷害モデルを用いて検討した.【方法】マウスの腸粘膜におけるDPP family(DPP4,8,9およびFAP)の発現および活性をreal time PCR法および蛍光法で定量的に検討した.次にDPPIV選択阻害剤(sitagliptin 0.3mg/kg~30mg/kg)を経口的に単回投与し,粘膜内DPP活性に与える影響について検討した.小腸粘膜傷害はラットにインドメタシンを8mg/kg/dayを2日間皮下投与することにより作成した.実験群はインドメタシン初回投与2日後から,成分栄養剤を自由摂食させた群,DPPIV阻害剤単独投与群,成分栄養剤にDPPIV阻害剤を併用した群,disease control群の4群を作成し,7日後に小腸潰瘍の治癒状態,血漿中および粘膜内GLP-2濃度をELISA法にて比較検討した.【結果】DPPIVmRNA発現は空腸でもっとも高く,十二指腸,回腸,大腸の順で低くなっていた.DPP活性も同様であり,粘膜内DPP活性はDPPIV発現に起因するものと考えられた.DPPIV選択阻害剤投与により,小腸粘膜内DPP活性は有意に抑制されたが,大腸粘膜内では抑制効果は認められなかった.インドメタシン誘発小腸粘膜傷害については,成分栄養剤にDPPIV阻害剤を併用した群で,ulcer scoreが低下,回腸粘膜内GLP-2濃度が上昇していた.また,これらの粘膜治癒促進効果はGLP-2受容体antagonistであるGLP-2(3-33)を100μg/kg皮下投与したところ,部分的に抑制された.【結論】DPPIV選択阻害剤は小腸粘膜内においてDPP活性を有意に抑制し,成分栄養剤を併用することで小腸粘膜傷害の治癒を促進した.これらの作用は内因性GLP-2の活性化を介したものであることが示唆された.
索引用語 GLP-2, DPPIV