セッション情報 シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-

タイトル 消S5-3:

脂肪の摂取による腸管肥満細胞の活性化

演者 坂田 資尚(佐賀大・消化器内科DELIMITERUniversity of Cincinnati)
共同演者 藤本 一眞(佐賀大・消化器内科), P. Tso(University of Cincinnati)
抄録 【背景】軽微な慢性炎症が循環器疾患や糖尿病など様々な病気の基盤病態として捉えられるようになり,その制御が望まれている.しかしながら,慢性炎症の成り立ちは複雑で,多様な細胞が関与していると考えられている.以前我々は,腸間膜リンパ瘻ラットを用いて,脂肪の摂取が腸管粘膜型肥満細胞を活性化し,ヒスタミンやrat mucosal mast cell protease-2(RMCP-2)などの化学伝達物質を遊離させることを明らかにした.今回,摂取する脂肪の違いによる肥満細胞活性化への影響について検討した.
【方法】脂肪として3種類のトリアシルグリセロール,trilinolein (C18:2 n-6),trilinolenin (C18:3 n-3) 及びtriolein (C18:1 n-9)を使用した.SDラットの腸間膜リンパ管にカニュレーションし持続的にリンパ液を採取した.各トリアシルグリセロールを含んだ脂肪乳剤を十二指腸内に留置した管より投与し,リンパ液を6時間連続して採取し,各時間におけるヒスタミン,RMCP-2,prostaglandin (PG)D2,タンパク質濃度を測定した.
【結果】trilinoleinとtrilinoleninを投与すると,有意にリンパ液中の肥満細胞由来化学伝達物質が増加し,リンパ液中のタンパク質濃度も増加した.対照的に,trioleinの投与では肥満細胞の活性化はみられなかった.RMCP-2のピーク値は,trilinolein投与後432.97±77.53 ng/ml,trilinolenin投与後317.50±47.59 ng/mlであり,有意にtriolein投与後141.46±23.46 ng/mlより高い値を示した(P<0.05).RMCP-2と同様に,ヒスタミンのピーク値もtrilinolein投与後34.2±1.7 ng/ml,trilinolenin投与後 19.85±1.06ng/mlで,triolein投与後12.97±0.62ng/mlと比べ,有意に高い値を示した.Trilinoleinの投与はコントロール群と比較し,PGD2の濃度も有意に上昇させた(1461.23±133.12 vs.842.30±129.02 pg/ml, P<0.05).
【結論】脂肪の摂取により腸管粘膜型肥満細胞は活性化されリンパ液中に化学伝達物質が遊離される.摂取する脂肪の種類によって,肥満細胞の活性化に差があることが明らかとなった.
索引用語 脂肪, 肥満細胞