セッション情報 シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-

タイトル 消S5-4:

ストレスによる老齢動物の摂食低下には5-HT2C受容体の機能亢進が関与する

演者 大西 俊介(北海道大・消化器内科)
共同演者 武藤 修一(苫小牧市立病院・消化器科), 武田 宏司(北海道大大学院・薬学研究院臨床病態解析学)
抄録 【目的】高齢消化器病者ではしばしば栄養不良が認められるが,その最大の要因は食欲不振である.以前われわれは,老齢動物の摂食低下には,グレリン分泌異常とグレリン感受性の低下が関与することを報告した(Endocrinology 2010).しかしながら,高齢者における食欲不振の原因は複雑であり,環境変化によるストレスの関与も考えられる.今回我々は,高齢動物をもちいて新奇環境ストレス負荷による摂食行動の変化とその機序を検討した.【方法】79-80週齢の老齢および6週齢の若年C57BL/6J マウスに対して,グループ飼育から個別飼育に変更する新奇環境ストレスを施し,摂食量に及ぼす5-HT2C受容体拮抗薬(SB242084)および5-HT2C受容体作動薬(mCPP)の影響を検討した.さらに,下垂体・副腎(HPA)系の評価を行い,RT-PCRおよびin situ hybridization(ISH)を用いて,視床下部5-HT2C受容体mRNAの発現を検討した.【成績】新奇環境ストレス負荷後,老齢マウスでは若年マウスに比べより長時間持続するHPA系の亢進と摂食量の低下が認められた.SB242084はストレス負荷老齢マウスのHPA系亢進を抑制し,摂食量を改善させた.一方mCPPは,若年マウスの摂食に影響をおよぼさない低用量においても老齢マウスの摂食量を強く抑制した.老齢マウスの視床下部,特に室傍核の5-HT2C受容体mRNAは,新奇環境ストレス負荷により有意に増加した.【結論】新奇環境ストレスによる高齢動物の摂食低下には,5-HT2C受容体の増加および感受性の亢進を介した室傍核CRFニューロンの活性化が関与する.
索引用語 ストレス, 5-HT2C受容体