セッション情報 シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-

タイトル 消S5-6:

脂肪組織と食道扁平上皮癌の細胞生物学的相関

演者 中山 敦史(佐賀大・内科DELIMITER佐賀大・病因病態科学)
共同演者 岩切 龍一(佐賀大附属病院・光学医療診療部), 藤本 一眞(佐賀大・内科)
抄録 【目的】近年,脂肪組織の増加を基盤とした肥満と癌との関連が疫学的に示唆されており,脂肪組織が癌細胞の細胞動態に活発に影響していると推測される.脂肪組織が食道扁平上皮癌細胞に与える影響は不明であるため,我々が開発した脂肪組織の器官培養系を用いて,食道扁平上皮癌細胞と脂肪組織の相互作用を検討したので報告する.【方法】材料は食道扁平上皮癌細胞株(EC-GI-10: 高分化型,TE-9: 低分化型),生後1週のラットから採取した皮下脂肪組織である.脂肪組織を細切してコラーゲン・ゲルと包埋し,その上に癌細胞を播種して,混合培養した.対象は,EC-GI-10およびTE-9単独培養である.組織化学,電顕,免疫組織化学,ウェスタンブロット,ELISA法を用いて,細胞増殖をBrdU,Ki-67で,アポトーシスをcleaved caspase 3で,浸潤をE-cadherin,Laminin-5,Filamin A,MT1-MMPで,分化をp63,involucrinで解析した.さらに,IGF-1受容体(IGF-1R),MAPK及びPI3K-Akt pathwayやHER2発現を解析した.また,培養上清中のアディポカイン(アディポネクチン,レプチン,レジスチン)とIGF-1の濃度を測定した.【成績】脂肪組織は,癌細胞の増殖,浸潤,分化を促進し,アポトーシス,HER2発現を抑制した.また,pIGF-1R,MAPK及びPI3K-Akt pathwayの発現を促進した.更に,脂肪組織単独培養上清と比較して,癌細胞と脂肪組織の混合培養上清では,アディポネクチン,レジスチン,IGF-1の濃度が低下した.【結論】我々は,初めて脂肪組織と食道扁平上皮癌の相互作用を解析し,脂肪組織がIGF-1/MAPK/PI3K-Akt pathwayを介する食道扁平上皮癌の進展やHER2分子標的療法抵抗性に関与することを明らかにした.肥満症では,インスリン抵抗性に伴い血清IGF-1濃度が上昇すると言われており,今回の実験結果からは,IGF-1が癌の進展に関与している可能性を示唆している.今後は,肥満症脂肪組織を用いて,脂肪組織の増加を基盤とした肥満や肥満症と食道扁平上皮癌の関連を解析する予定である.
索引用語 食道扁平上皮癌, 脂肪組織