セッション情報 シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-

タイトル 消S5-7:

レプチンは腫瘍に発現するレセプターを介して大腸腫瘍の増殖を促進する

演者 日暮 琢磨(横浜市立大・消化器内科)
共同演者 遠藤 宏樹(横浜市立大・消化器内科), 中島 淳(横浜市立大・消化器内科)
抄録 【緒言】近年,高脂肪食・過栄養やそれに伴う肥満状態が大腸発癌を促進するといった疫学や動物研究が数多く報告されているが,メカニズムはまだ不明な点が多い.脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一つであるレプチンは,摂食により増加し,脳下垂体にある満腹中枢を刺激し,食欲・代謝をコントロールする.肥満状態ではレプチンは常に高値となる.レプチンレセプター(ObR)は小腸上皮には発現しているが大腸上皮にはほとんど発現していない.しかし大腸腫瘍にはObRが発現する.レプチンとそのシグナルが大腸腫瘍にどのように作用するかはまだ不明な点が多い.我々はこれまでレプチン欠損(ob/ob)/ObR欠損(db/db)マウスを用いてレプチンシグナルが腫瘍の増大に促進的に働くことを報告してきたが,全身性の液性因子欠損/受容体欠損モデルでは類似作用を有する液性因子が代償を行うため,腸管局所での分子機序の解析には限界があった.今回我々は腸管特異的にObRをノックアウトした(cKO)マウスを用いて,全身における交絡因子を排除し化学発癌実験を行い,大腸腫瘍に対するレプチンとそのシグナルの影響を検討した.
【方法】ObRcKOマウスとコントロールマウスにアゾキシメタンによる化学発癌モデルを作成し,普通食,高脂肪食下で腫瘍の発生・増大と正常上皮・ポリープにおける細胞増殖・細胞死を検討した.またレプチンの下流シグナルを大腸癌細胞株を用いて解析を行った.
【結果】cKOマウスとコントロールマウスは血清レプチンを含め,体重,肥満関連血液検査データは差がみられなかったが,腫瘍の大きさがcKOマウスでは有意に小さかった.肥満によって上昇するレプチンや余分なエネルギーを利用し腫瘍が増大するメカニズムが考えられ,ObR-STAT3経路が重要な役割を果たしていた.
【考察】コンディショナルノックアウトモデルを用いて全身の交絡因子を取り除きレプチンの大腸腫瘍増大のメカニズムを解明した.大腸腫瘍におけるレプチンシグナルを阻害することにより腫瘍を予防できる可能性が示唆された.
索引用語 レプチン, 大腸腫瘍