セッション情報 シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-

タイトル 消S5-8:

INSL5は大腸内分泌細胞の特徴的なマーカーであり,直腸神経内分泌腫瘍の発症に関与している可能性がある.

演者 真嶋 浩聡(秋田大大学院・消化器内科学)
共同演者 大野 秀樹(東京大医科学研究所附属病院・先端診療部), 大西 洋英(秋田大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】Insulin-like peptide 5 (INSL5)は1999年に報告されたInsulin/Relaxinファミリーに属する新しい蛋白である.最近,INSL5がインスリン分泌等に影響を及ぼしていることが示されたが,消化管における機能は明らかではない.【方法】INSL5の消化管における役割を検討するために,1.INSL5及びその受容体RXFP4の発現・分布,2.腸管内分泌細胞マーカーのクロモグラニンA(CgA)との関連,3.腸管上皮細胞株の増殖に及ぼす影響,4.野生型マウス,INSL5ノックアウトマウス(Insl5-/-)のDSS腸炎に対する反応の比較,5.ヒト消化管神経内分泌腫瘍(NET)におけるINSL5及び各種マーカーの発現の検討等を行った.【成績】INSL5は大腸特異的に発現しており,近位大腸から徐々に発現が増加し,直腸で最も多く発現していた.粘膜層の紡錘形の細胞に発現しており,腸管内分泌細胞と考えられた.受容体RXFP4は全消化管に発現していた.CgAを共発現している細胞はINSL5陽性細胞の11.7±1.5%に過ぎず,CgA陽性細胞の7.8±2.3 %にしかINSL5は共発現していなかった.腸管上皮細胞株(CaCO2,LoVo,Colo320DM)の増殖に影響を及ぼさなかった.DSS腸炎を起こしたInsl5-/-マウスは,野生型マウスと比較して体重減少や腸炎の程度に差異を示さなかった.ヒト消化管NETにおける各種マーカーの発現を検討すると,直腸NETでは,INSL5,RXFP4は100%(12/12)に発現しており,CgAは8.3%(1/12)のみであった.発現強度及び正常腸管粘膜での発現パターンを勘案すると,INSL5とCgAの発現は鏡像の関係にあり,直腸NETの発症にINSL5-RXFP4シグナルが関与している可能性が示唆された.6ヶ月齢以上のマウスの随時血糖に異常を認めなかった.【結論】INSL5は大腸の神経内分泌細胞に特異的に発現していた.CgA陽性細胞とは異なる細胞に主に発現しており,直腸NETの発症に関与している可能性がある.
索引用語 INSL5, 神経内分泌腫瘍