セッション情報 |
シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)
消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-
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タイトル |
肝S5-10:脂質異常症と脂肪肝の共存におけるapoBの役割と脂肪酸による分泌制御
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演者 |
太田 嗣人(金沢大・脳・肝インターフェースメディシン研究センター) |
共同演者 |
金子 周一(金沢大附属病院・消化器内科) |
抄録 |
【目的】肥満症や糖尿病の肝臓では,VLDL産生が亢進しTGに富むリポ蛋白(TG rich lipoproteins, TRLPs)の血中への分泌が過剰となり,動脈硬化惹起性リポ蛋白異常が生じる.しかし一方では,TGが蓄積し脂肪肝となる.すなわち,インスリン抵抗性では高TG血症と脂肪肝が共存する.この様な全身と肝臓の脂質代謝異常の制御おいて,肝臓から分泌されるapolipoprotein B100 (apoB)は主要な役割を担っている.我々は,肥満・インスリン抵抗性では,脂肪組織から門脈を介し過剰に流入する脂肪酸により肝臓に小胞体ストレスが誘導され,apoB分泌が二相性に制御される結果,高TG血症と脂肪肝を生じることを明らかにしてきた.今回,鎖長と飽和度の異なる脂肪酸が,1)どのような代謝経路を介して細胞内ストレスを誘導しapoB分泌を変化させるのか,2)apoB分泌制御を介した全身へのTRLPsの供給と肝脂肪化に与えるインパクトに関してin vitro及びin vivoにて検討した.【方法】オレイン酸(OA,不飽和脂肪酸),パルミチン酸(PA,飽和脂肪酸),DHA(n3多価不飽和脂肪酸)の各脂肪酸を,1)McA-RH7777 (McA)肝細胞に16時間添加し,また,2)正常マウスの肝臓へ9時間潅流し,ストレス応答,[35S]apoB分泌,肝脂肪含量への影響の差異につき検討した.【成績】PA及びDHAはOAに比し,肝細胞やマウス肝臓からのapoB分泌を強く抑制した.PAはOAに比し,肝細胞及びマウス肝に強い小胞体ストレスを誘導した.一方,セラミドの合成阻害により小胞体ストレスは減弱し,apoB分泌は回復し,肝TG含量は低下した.DHAによるapoB分泌の抑制は抗酸化剤により回復したが,肝TG蓄積への影響は乏しかった.また,肝細胞のLC3II/LC3I増加を伴っており,DHAは脂質過酸化とオートファジーの亢進によりapoB分泌を低下させた.【結論】肝臓から分泌されるapoBは,基質である脂肪酸の種の違いにより,固有の代謝経路を介した小胞体ストレスや酸化ストレス,オートファジーによる分泌制御を受け,全身及び肝臓の代謝疾患の病態形成に寄与する. |
索引用語 |
apolipoprotein B, 脂質代謝異常 |