セッション情報 シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-

タイトル 肝S5-12:

NAFLD/NASHにおける高インスリン血症は肝炎症と相関している

演者 榎奥 健一郎(東京大大学院・消化器内科学)
共同演者 建石 良介(東京大大学院・消化器内科学), 小池 和彦(東京大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】NAFLD/NASHに好発する高インスリン血症および各種臨床パラメータと肝病理所見の関連を明らかにする事.【方法】2011年11月~2013年2月の期間に肝生検を行ったNAFLD患者の内,インスリンも経口糖尿病薬も投与されていない患者のみを対象とした.肝生検の適応は,以下の通り:1-A)Fibroscan 7.0kPa以上,1-B)直近の6ヶ月間ASTかALTが正常上限以上,2)腹部超音波にて肝腎コントラストあり,3)アルコール摂取20g未満,4)特定の肝炎の原因無し,5)肝癌の既往なく現在も腹部超音波にて肝癌が認められない.ただし1-A)と1-B)については,1-A)が過去の肝炎症を反映し1-B)が現在の肝炎症を反映するものと考え,どちらか一方を満たせば良いこととした.病理所見はすべてNASH CRNによるNAFLD activity score(NAS)に基づいて評価した.採血データは全て肝生検当日の早朝空腹時に得た.空腹時血糖,HbA1c,空腹時血中インスリン濃度(IRI),空腹時自己分泌高感度血中C-ペプチド値(CPR),HOMA-IRとNASの各項目(Lobular inflammation(LI), Hepatocellular ballooning(Ballooning), Steatosis)およびFibrosis stageとの相関をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.【成績】58人の対象患者は,平均年齢55.2±15.7歳,男性34人(58.6%),BMIは平均28.1±3.9kg/m2であった.NASの内訳は,0-2点11人(19.0%),3-4点28人(48.3%),5点以上19人(32.8%)であった.肝組織のLIとBallooningはIRI,CPR,HOMA-IRのいずれとも有意な正の相関を示した.一方,Steatosisはいずれの糖代謝パラメータとも有意な相関を示さなかった.また,LIが高くなると空腹時血糖は変化しないがCPRは有意に上昇していた.【結論】NAFLD/NASHの肝炎症が強いほど,空腹時血糖を維持するすなわち肝臓での糖新生を抑制するために必要なインスリンが多くなる可能性がある.肝臓のインスリン抵抗性は肝炎症と相関している可能性がある.
索引用語 NASH, メタボリック症候群