セッション情報 シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-

タイトル 肝S5-13:

肝弾性度からみた肝硬変症の栄養管理

演者 関本 匡(千葉大・消化器内科)
共同演者 丸山 紀史(千葉大・消化器内科), 横須賀 收(千葉大・消化器内科)
抄録 【目的】肝弾性度は慢性肝疾患のマネージメントに広く活用されている.今回,Fibroscan®(Echosens,Paris,France)で得られた肝弾性度と栄養状態の関連を肝硬変例において検討し,肝弾性度を応用した新たな栄養管理を提案した.【方法】IRB承認臨床試験として肝弾性度測定(Fibroscan502,2010年6月~2012年5月)が施行された540例中,FibroscanにてF4(≧12.5KPa,Gastroenterology 2005)と判定され,かつ1年以上の経過観察が可能であった68例(男37,女31,62.2±12.4歳:Child-Pugh A59,B6,C3:HCV43,HBV4,NASH4,アルコール4,PBC2,BCS2,AIH1,原因不明8)を対象とした.なお腹水例など弾性度測定困難例は除外した.栄養指標値(アルブミン・コリンエステラーゼ)や栄養療法(経口栄養剤,特殊アミノ酸製剤)への反応性(増悪・不変・改善:アルブミン0.3g/dL/年以上の変化)について,肝弾性度との関連を検討した.【成績】1.肝弾性度と栄養指標値の関連:肝弾性度は平均25.9±13.6KPa(12.8-67.8)で,肝重症度(Child-Pugh score)との相関はみられなかった.アルブミンとコリンエステラーゼは,平均弾性度値以上の24例(3.7±0.4g/dL,174±61IU/L)では,それ以下の44例(4.1±0.5g/dL,p=0.0013;226±74IU/L,p=0.0052)に比べて有意に低値であった.すなわち肝弾性度と栄養指標値の関連が示された.2.肝弾性度からみた栄養療法への反応性の検討:観察期間における栄養状態の変化は増悪37例,不変13例,改善18例であり,肝弾性度との関連は明らかでなかった.栄養療法介入例(N=17)について検討すると,栄養指標の改善は4例,増悪・不変は13例にみられた.そして,ROC曲線から得られたCut off値33.8KPa未満の例では(n=8,改善例4),それ以上の例(n=9,改善例0)に比べて,改善例が有意に多く認められた(p=0.0311).【結論】肝弾性度は栄養指数との関連を示し,栄養療法の効果予測に有用であることが示された.高度の肝弾性度例,すなわち栄養療法への反応不良例への対策が今後の課題である.
索引用語 栄養療法, 肝弾性度