セッション情報 シンポジウム5(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と栄養代謝ネットワーク-基礎から臨床まで-

タイトル 消S5-14:

ビタミンDは膵星細胞をターゲットとして膵線維化を抑制する

演者 正宗 淳(東北大・消化器病態学)
共同演者 下瀬川 徹(東北大・消化器病態学)
抄録 【目的】ビタミンの吸収代謝は生体の恒常性維持に重要である.消化管からのビタミンD (VitD)の吸収低下や活性化VitDへの変換低下は,容易にVitD欠乏症をおこす.VitDは核内受容体であるVitD受容体(VDR)を介して,カルシウム代謝をはじめ多彩な細胞機能調節に関与する.これまでにVitDが膵癌リスクを低減させる可能性が報告されているが,その機序は明らかではない.膵線維化は膵癌の特徴的病理所見であり,膵星細胞がその形成に中心的役割を果たす.膵癌―膵星細胞間相互作用が新たな膵癌治療ターゲットとして注目されている.今回VitDを介した膵線維化制御機構につき検討した.【方法】(1) 膵星細胞におけるVDR発現を,培養膵星細胞ならびに膵癌患者の切除膵組織標本を用いてreal-time PCRまたは免疫染色にて検討した.(2) 活性化VitD3の膵星細胞活性化ならびに細胞機能に与える影響を,細胞増殖(BrdU incorporation assay),細胞遊走(two-chamber assay),PDGFによるERKおよびAktの活性化(リン酸化特異的抗体を用いたWestern blotting)ならびにα-smooth muscle actin発現(Western blotting)を指標に検討した.(3)活性化VitD3誘導体であるカルシポトリオールを腹腔内投与し,同所移植膵癌モデルにおける膵線維化形成への影響を検討した.なお本研究はSalk Institute M Downes博士ならびにRM Evans博士との共同研究として行った.【成績】活性化膵星細胞はVDRを発現していた.活性化VitD3投与により膵星細胞の増殖,遊走,PDGFによるERK・Aktの活性化およびα-smooth muscle actin発現が抑制された.カルシポトリオール投与によりin vivoでの膵線維化形成が抑制された.【結論】活性化VitDは膵星細胞活性化と膵線維化形成を抑制した.VitDが膵線維化治療のターゲットとなる可能性が示唆された.
索引用語 ビタミン, 膵癌