セッション情報 シンポジウム6(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

大腸内視鏡検診の評価の現状と今後の課題

タイトル S6-基調講演:

大腸内視鏡検診の有効性評価と偶発症に関する主な研究報告

演者 島田 剛延(宮城県対がん協会がん検診センター)
共同演者 加藤 勝章(宮城県対がん協会がん検診センター), 渋谷 大助(宮城県対がん協会がん検診センター)
抄録 S状結腸内視鏡検診(SS)の有効性は,症例対照研究や小規模の無作為化比較対照試験(RCT)により以前から示唆されていたが,最近各国から相次いで報告されたRCTにより決定的となった.2010年に報告された英国の研究では,SSを実施することにより,大腸癌死亡率は31%の有意な低下を示した.大腸癌罹患については,直腸・S状結腸では36%の有意な低下を示したが,それより深部の大腸では罹患減少効果を認めなかった.2011年にはイタリアから,2012年にはアメリカからRCTの結果が報告されたが,同様の成績であった.従って,SSの大腸癌罹患率及び死亡率減少効果は証明されたと考えて良いだろう.これらRCTにおけるSSの穿孔頻度をみると,英国の研究では1例(0.002%),イタリアでは1例(0.01%),アメリカでは3例(0.0028%)であった.なお,わが国においてはNozakiらがSSの成績を報告しているが,117,644件のSSで穿孔は発生しなかった.以上より,SSはわが国における対策型検診の推奨基準を満たす可能性があるが,実施に際しては受診間隔や便検査との併用など検討すべき重要な問題が残されている.上記RCTにおいて,SSの有効性は深部大腸では認めない,あるいは,直腸・S状結腸より小さかったことから,全大腸内視鏡検診(CS)に期待がかかる.CSについては,症例対照研究やコホート研究が幾つか存在し,大腸癌罹患率や死亡率低下を示唆する結果が得られている.しかし,右側結腸においては,左側より効果が減弱する,あるいは,効果を認めないとする報告もあり,質の高い研究による更なる検討が求められる.CSに関するRCT結果は未だ得られていないが,対照の異なるRCTが北欧(1回のCSと検診無しの比較),スペイン(1回のCSと隔年の便潜血免疫法の比較),日本(毎年の便潜血免疫法+1回のCSと毎年の便潜血免疫法の比較)で進行中である.スペインの報告では穿孔は1例(0.02%)に発生していた.CSについては長期間に及ぶ更なる研究が必要であるが,様々なRCTが行われており今後の展開が期待される.
索引用語 大腸がん検診, 内視鏡