抄録 |
【背景】大腸がん罹患率の低下に大腸内視鏡検査の果たす役割は大きいが, 偶発症といった無視できない不利益があるのも事実である.【目的】大腸内視鏡検診における偶発症を軽微なものまで含めて検討する.【方法】2004年3月から2012年12月までに当センターで無症状健常集団に対して行った内視鏡検診受診者のうち,研究同意が得られたのべ20,884名(平均年齢61歳, 男性: 13,178名, 女性: 7,715名, リピーター含む)を対象とした. 当院ではほぼ全例に鎮痙剤, 鎮痛剤(塩酸ペチジン)および希望に応じて鎮静剤(ミダゾラム)を併用し, 同日に上部内視鏡検診に引き続き大腸内視鏡検診を施行している. 内視鏡検査の際の送気は, 2004年3月~12月は上下部共に通常送気であったが, 2005年1月以降は大腸内視鏡にCO2送気を導入し, 2012年8月からは上部内視鏡にもCO2送気を導入した. 偶発症は内視鏡レポートを元に抽出し, 明らかに上部内視鏡検査に起因すると思われるものは除外した上で, 頻度, 症状, 重症度を検討した.また,年齢, 性別, 使用薬剤, CO2送気併用の有無別に偶発症発生頻度を検討した.【結果】内視鏡検診全体の偶発症は571例(2.7%)で,大腸内視鏡に起因する偶発症は454例(2.2%)であった. その症状(重複あり)は嘔気(n=220), 気分不快(n=137), 嘔吐(n=111), 血圧低下(n=63), ふらつき(n=41), 冷汗(n=39), 腹痛(n=39), 徐脈(n=20), 低血糖(n=20), 血圧上昇(n=18), 発疹(n=11), めまい(n=10), 意識レベル低下(n=3)であった. 偶発症の発生率は年齢が増えるにつれて増加し(40代: 1.5%, 50代: 1.9%, 60代: 2.2%, 70代: 3.1%, 80代: 2.9%), 女性(女性: 3.6%, 男性: 1.3%), グルカゴン使用(グルカゴン: 4.9%, ブスコパン: 1.5%)で高かった. また, 送気ガス別の経時的推移は上下部空気の時は3.7%, 上部空気+下部CO2で2.6%, 上下部CO2で1.3%と減少した.【結論】偶発症は高齢, 女性, グルカゴン使用例では高かった. 送気をCO2に変更することで発生率が低下した. |