セッション情報 シンポジウム8(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

内視鏡治療時代の食道扁平上皮癌の診断学

タイトル 内S8-3:

白色調を呈する食道扁平上皮癌の特徴

演者 飯塚 敏郎(虎の門病院・消化器内科)
共同演者 菊池 大輔(虎の門病院・消化器内科), 貝瀬 満(虎の門病院・消化器内科)
抄録 【背景】 表在食道扁平上皮癌の多くは,通常観察で発赤調を呈し,NBI拡大内視鏡ではbrownish areaとしての認識から始まり,内部の血管像の観察まで行え,存在診断とともに深達度診断まで行っているのが現状である.しかし一方で,発赤調を呈さない食道扁平上皮癌の症例も経験される.白色調を呈する部分が主体である病変の臨床病理学的な特徴は,明らかになっていない部分も多い.そこで,今回当院で経験した表在食道扁平上皮癌症例の中で,白色調を主体とする病変を抽出し,臨床病理学的特徴を明らかにすることを目的とした.【対象】 2009年1月から2012年12月までに当院で施行した食道癌ESD症例のうち,組織学的に扁平上皮癌であり,化学療法や化学放射線療法など前治療歴があるものや術前に拡大観察が行われていないものなどを除外した394病変中,白色調を主体とした病変22病変を対象とした.肉眼形態,NBI拡大観察所見,深達度,病変サイズなど臨床病理学的特徴を検討した.【結果】 平均年齢67.7歳,性別は男女比が17:5であった.肉眼形態では平坦から陥凹を呈するのが15病変で,隆起成分を有する病変は7病変であった.平均腫瘍長径は24.1mm(7-75mm),深達度はEP/LPMが17病変,MM/SM1が4病変,SM2が1病変であった(0-1sepの形態を呈した特殊型であった).白色部分が角化によると考えられる病変の場合,NBI拡大観察で同部での血管視認はできなかったが,角化以外の白色調の部分では血管が視認できる病変も見られた.NBI拡大観察で特徴的所見は,白色部分の周囲にbrownish areaとして認識できる領域が認められるケースが多い点である.同部ではB1血管が視認できる場合もあり,癌の存在診断が可能となった.白色調の部分にカンジダが固着していた症例が1例認められ,NBI拡大観察での診断は困難であった.【結果】 白色調を主体とする食道扁平上皮癌は,5.6%と頻度が低い結果であった.しかしNBI拡大観察を行うことで,異型血管の同定ができる部分が認識でき,ヨード染色で不染領域を呈することから,診断が可能となった.
索引用語 食道扁平上皮癌, 表在癌