抄録 |
【背景・目的】食道表在癌に対する内視鏡治療の適応拡大に伴い,より正確な深達度診断を目的として,積極的に拡大観察が行われている.食道学会分類を併用した深達度診断の精度と問題点の検討を目的とした.【対象・方法】1)2011~12年の2年間に内視鏡治療を行った食道表在癌193病変のうち,前治療のない176病変(T1a-EP/LPM:141,T1a-MM/SM1:23,SM2以深:12)を対象とし,治療前診断の正診率と誤診例17病変の誤診理由を検討する.2)同期間の内視鏡治療例のうち,拡大観察を行った120病変(T1a-EP/LPM:87,T1a-MM/SM1:21,SM2以深:12)について食道学会分類による血管像と病理診断の一致率を検討する.【結果】1)深達度別の正診率は,T1a-EP/LPM癌95%(134/141),T1a-MM/SM1癌78.2%(18/23),SM2以深癌58.3%(7/12)であった.T1a-EP/LPM癌の誤診7例の理由は,通常観察(びらん形成,辺縁隆起,硬さ,厚み,赤さ)での深読み5例,拡大観察(B2血管,AVAm)での深読み2例であった.T1a-MM/SM1癌の誤診5例のうち浅読み4例は,微小浸潤3例,表層拡大型病変1例,深読みした1例は通常観察(陥凹内の陥凹)による誤診であった.SM2以深癌の誤診5例は,sm2への微小浸潤3例,表層拡大型病変2例で浸潤部を読み切れなかった.2)拡大観察でB1血管のみを認めた78例のうちEP/LPMと病理診断されたのは71例(91%),B2血管を認めた35例中MM/SM1は15例(42%)であった.B3血管を認めた1例はSM2以深であった(100%).浅い癌が浸潤部の表層を覆う,角化物の付着により最深部の血管がみえない,微小浸潤などが浅読みの原因となっていた.深読みしたB2血管は,びらん周囲に分布する,径が細い,一定の領域にB1と細いB2が混在する特徴がみられた.【結語】通常観察で浸潤を疑い拡大観察で裏付ける手法は,病巣内の部位別診断をより確実なものとした.血管所見はおおむね深達度を反映していると思われるが,浸潤を血管で読めない症例も存在するため血管のみに頼る診断法は限界があり,通常観察との併用が重要である. |