抄録 |
【目的】近年,画像強調内視鏡の普及により表在性食道癌を診断する機会が増え,井上分類,有馬分類を簡略化した新分類(日本食道学会)が普及しつつある.検討目的は当院における新分類による診断精度およびヨード染色が内視鏡治療に及ぼす影響を明かにすることである.【方法】2009年1月から2012年12月までの期間に行った食道扁平上皮癌に対する内視鏡治療例のうち,術前のNBI拡大内視鏡像が評価可能な111症例,125病変に対し病理学的特徴,治療成績,合併症を検討した.【成績】125病変の特徴は男/女:103/8,平均年齢68.2±7.4歳,病変局在U34 M81 L10,病変サイズ18.13±50.1mm,病変形態0-IIa 5,IIb 102,0-IIc14,0-IIc+IIb 3,0-IIa+IIb1,穿孔4(3.2%),後出血0,一括切除率118(94.4%),一括治癒切除率108(86.4%)であった.またNBI拡大所見における深達度の割合はA;0,B1;EP 82/LPM 21/MM 2/SM1 1,B2; EP 2/LPM 10/MM 6, B3;0,R;SM2 1 であり,B1の正診率は97.2%,B2の正診率はAVA small加味すると72.2%であった. また治療前ヨード染色の有無で2群に分けると前ヨードあり25病巣となし100病巣では治療成績に有意差を認めなかった.一方前ヨードあり25病巣を治療時の形態変化の有無で2群に分けると,変化有り10病巣となし15病巣の間には病変サイズのみ有意に(p<0.05)なし群が大きかったが,深達度,側方断端陽性率,ヨード散布からの経過日数に有意差を認めなかった.【結論】食道癌治療における新分類による拡大内視鏡診断は,絶対的適応であるEP,LPMの深達度診断には大変有用であったが,相対適応であるMM,SM1の診断能は比較的低かった.また処置前ヨード散布では形態変化を40%に認めたが,ヨード散布の治療成績への影響は見られなかった. |