セッション情報 シンポジウム8(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

内視鏡治療時代の食道扁平上皮癌の診断学

タイトル 消S8-6:

食道扁平上皮腫瘍においてNBIでみられる上皮の茶色変化(background coloration)の組織学的解析

演者 神崎 洋光(大阪府立成人病センター・消化管内科DELIMITER岡山大病院・消化器内科)
共同演者 石原 立(大阪府立成人病センター・消化管内科), 石黒 信吾(PCL大阪)
抄録 背景:食道扁平上皮腫瘍はNBIによってBrownish areaとして認識される.これは毛細血管の拡張増生ならびに上皮の茶色変化(いわゆるBackground coloration)によって生じるものであるが,上皮の茶色変化の原因は明らかとなっていない.目的:上皮の茶色変化の原因ならびにその意義を明らかにする.方法:2011年5月から2012年3月までに生検組織にて扁平上皮癌もしくは高異型度上皮内腫瘍と診断され,内視鏡的切除を行った58症例68病変を対象とした.術直前に茶色変化を伴うBrown(B)群と血管変化が主体で茶色変化に乏しいNon-Brown(NB)群に分類した.病変内の代表的な領域(関心領域)にマーキングを行い,同領域を切り出し組織所見の検討を行った.病理学的評価はH,E染色ならびにベルリンブルー染色を用い,評価項目として1.重層扁平上皮(腫瘍表層の分化した扁平上皮層)の厚み,2.上皮の厚み,3.細胞異型度,4.表層分化の有無,5.腫瘍基底細胞層の有無,6.血管外赤血球の程度,7.ヘモジデリン片の程度について検討した.結果: 68病変のうち32病変はB群,36病変はNB群へと振り分けられた.68病変中67病変は扁平上皮癌もしくは高度異型上皮内腫瘍と診断された.関心領域に限るとB群では高率に扁平上皮癌もしくは高異型度上皮内腫瘍と診断された(31/32症例)が,NB群では低異型度上皮内腫瘍であることも多く(21/36症例),有意差を認めた(P<0.0001).茶色変化と関心領域における各種組織所見の単変量解析では,重層扁平上皮層が3層未満(P<0.0001),腫瘍による上皮非薄化(P=0.0001),高細胞異型度(P=0.0004)で有意な関連がみられた.多変量解析では重層扁平上皮層が3層未満(P=0.005, OR 9.6, CI:2.0-46.3),腫瘍による上皮非薄化(P=0.035, OR=4.6, CI:1.1-19.4)が茶色変化と関連していた.結語:上皮の茶色変化は扁平上皮癌や高異型度上皮内腫瘍の診断と強く相関しており,重層扁平上皮層と上皮の非薄化がその原因と考えられた.
索引用語 食道癌, background coloration