セッション情報 シンポジウム8(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

内視鏡治療時代の食道扁平上皮癌の診断学

タイトル 内S8-7:

咽頭・食道領域扁平上皮癌における上皮色調変化“Background coloration; BC”の成因に関する検討

演者 南 ひとみ(長崎大・消化器内科)
共同演者 磯本 一(長崎大・消化器内科), 中尾 一彦(長崎大・消化器内科)
抄録 背景 咽頭・食道領域の早期癌診断において,IPCLの変化に加え異常血管領域での上皮間の間質色調変化の重要性が報告されてきた.我々はこの色調変化をBCとし,その成因として癌細胞内のHb成分の関与を検討し報告してきた.これまでの我々の検討では,BCと癌・非癌の正診率は90.7%と高く,また癌細胞内にHbの成分が存在していること,RT-PCR,ISH(in situ hybridization)の結果から癌細胞内で産生されている可能性があることを報告してきた.一方で,扁平上皮癌のNBI拡大観察において,1. BCは同一病変の中でもその濃淡に差異を認める,2. T1a-EP/LPM程度の浅い癌において明瞭に陽性となり,T1a-MM/T1b-SMのような深部浸潤部では色調変化が弱くなる傾向がある,という現象を経験する.腫瘍の何らかの性質の変化や上皮の構造変化を反映していると考えられ,今回我々は癌細胞内のHb成分の差が関与している可能性を検証した.対象と方法 2007年9月~2012年11月までに当院で内視鏡検査を施行し,食道に病変を認め内視鏡と病理との対比可能であった135症例198病変を対象に,BCと組織型および抗Hb抗体を用いた免疫染色にて上皮癌細胞内のHbの関連を検討した.また,同一病変内にEP/LPMとMM~SM深部浸潤の部分が混在し,不均一な色調変化を認めた5病変において,それぞれ抗Hb抗体を用いた免疫染色を行い染色性を比較検討した.結果 BC陽性157病変中153病変(97.5%)はHGINを含む癌であった.またHGINを含む癌と診断された176病変のうち153病変(86.9%)はBC陽性であった.癌とHb抗体染色の一致率は80.9%(感度 91.0%, 特異度 77.0%)であった.粘膜深部~粘膜下層浸潤癌におけるHb抗体染色では,EP/LPM部分に対して,深部浸潤部で染色性の低下を認めた.考察と結論 同一病変において深部浸潤部と辺縁部において,抗Hb抗体の染色性に差を認めた.これは上皮色調と癌細胞内のHb成分との関連を示唆する結果であり,今後その原因を含めたさらなる検討が必要と考えられた.
索引用語 BC, 早期食道癌