セッション情報 シンポジウム8(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

内視鏡治療時代の食道扁平上皮癌の診断学

タイトル 内S8-9:

食道扁平上皮癌でのヨード染色と表層血管観察の領域診断能についての検討

演者 太田 俊介(東京医歯大・食道・胃外科)
共同演者 川田 研郎(東京医歯大・食道・胃外科), 河野 辰幸(東京医歯大・食道・胃外科)
抄録 背景)近年の画像強調併用内視鏡の進歩により,食道扁平上皮癌では,表層血管変化についての詳細な検討が行われ,ヨード染色観察と画像強調併用内視鏡観察とで,拾い上げ診断能についてはほぼ同等という報告もある.しかし,領域診断能についての詳細な検討は行われていない.目的)ヨード染色と画像強調併用内視鏡観察での領域診断能の差異についての検討.対象)2012年12月~2013年3月までに当科で行われたESD10例.方法)ESD直後と切り出し後に,LASEREOシステムで標本を観察.標本をヨード染色し,不染辺縁と不染部の血管を観察.更にチオ硫酸ナトリウムを撒布し,染色の程度をうすめ,不染辺縁付近の染色域の血管も観察.観察はIPCL様血管に限定し,形態,密度を含めた血管様式変化を観察した.結果)全10症例でヨード不染辺縁部拡大観察は183箇所行われ,内160箇所で有意な観察が行えた.病変全周に渡り,ヨード染色観察と,拡大内視鏡観察での領域診断が一致した例はなかった.160箇所の内,76箇所(47.5%)でヨード不染辺縁と血管様式変化は一致していた.79箇所(49.4%)でヨード不染が血管様式変化よりも広範に及び,5箇所(3.1%)で血管変化が広範に及んでいた.いずれの不一致部からも,SCCを認めた.ヨード染色が広範に及んだ箇所は最大で1.96mm中央値0.89mm血管変化との隔たりを認め,血管変化が広範の箇所は,最大で2.53mm中央値1.16mmヨード不染辺縁と隔たりを認めた.血管様式変化を規定した因子で,形態変化が主であったのは38.5%,密度変化が主であったのは29.5%,その他では両方の変化を認めた.結語)1)領域診断については,観察した約半数の箇所でヨード不染が広範に及んでおり,ヨード染色を基とすべきと考えられた.2)一方で,血管変化が広範に及ぶ箇所もあり,内視鏡治療時には血管変化も詳細に観察し,その上でヨード染色を行い,広い方を採用すべきと考えられた.3)拡大内視鏡による血管観察では,形態だけでなく,血管密度変化の観察も重要と考えられた.
索引用語 ヨード染色, 画像強調併用拡大内視鏡観察