セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害

タイトル 内S9-1:

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害 -当院の高齢者出血性消化性潰瘍におけるNSAIDs関与の現状-

演者 山田 雅彦(安城更生病院・消化器内科)
共同演者 竹内 真実子(安城更生病院・消化器内科), 細井 努(安城更生病院・消化器内科)
抄録 【目的】 NSAIDsは様々な効能を有し,幅広い領域で重用されるが,近年重大な副作用である消化管障害が高齢者を中心に重要な問題となっている.高齢者出血性消化性潰瘍の臨床的特徴,特にNSAIDs関与について検討したので報告する.【対象と方法】2002年4月から12年3月までに止血術を行った胃十二指腸潰瘍のうち,消化管悪性腫瘍合併例を除外した848例を,65歳以上の高齢群と65歳未満の非高齢群に分類し,その臨床像について比較検討した.また,05年度まで(第一期:274例),06-08年度(第二期:282例),09年度以降(第三期:292例)の3期に分け,推移を検討した.【結果】(1)高齢群は計470例,男女比300:170,平均年齢75.7歳,胃・十二指腸潰瘍比379:91で,非高齢群は各々378例,309:69,50.9歳,256:122であった.高齢群は非高齢群に比し,女性および胃潰瘍の比率が高かった.平均年齢は第一期63歳,第二期64歳,第三期66歳であり,高齢群の比率は各々52%,54%,60%といずれも漸次上昇していた.(2)NSAIDs内服は非高齢群88例(23%)に対し,高齢群245例(52%)で高率であり,複数服用も非高齢群(8%)より高齢群(16%)に多かった.NSAIDs服用高齢群は第一期75例,第二期85例,第三期85例と漸増していた.HP感染率は非高齢群(72%)に対して,高齢群(44%)は低率であった.(4)出血性潰瘍の再発は非高齢群10例(3%),高齢群14例(3%)と同等であったが,非高齢群は全例HP感染陽性・NSAIDs非服用であったのに対し高齢群では8例(57%)にNSAIDs関与が認められた.【結語】高齢者の出血性消化性潰瘍の半数がNSAIDs内服しており,再発にもNSAIDsが深く関与していた.増加し続けるNSAIDs起因性高齢者出血性潰瘍への対応には診療科の枠を超えた病診連携が重要であるとともに,NSAIDs消化管障害について一般に広く啓蒙する必要があると考えられる.
索引用語 高齢者, NSAIDs