セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害

タイトル 消S9-2追:

高齢者出血性胃十二指腸潰瘍における低用量アスピリンの関与

演者 山内 康平(佐賀県立病院好生館・消化器内科)
共同演者 樋口 徹(佐賀県立病院好生館・消化器内科), 藤本 一眞(佐賀大附属病院・消化器内科)
抄録 【目的】様々な基礎疾患を有する高齢者の出血性胃十二指腸潰瘍患者が大きな問題となっている.今回,高齢者出血性胃十二指腸潰瘍における抗血栓薬(特に低用量アスピリン)の関与について,県内中核病院1施設で経験した症例を中心に検討した.【対象】1999年より2011年の13年間に緊急内視鏡検査を施行した461例の出血性胃十二指腸潰瘍で検討した.内訳は男性327名,女性134名で,平均年齢は62.9±16.8(14‐93)歳であった.65歳以上の高齢者231名について,64歳以下の若年者は230名と比較検討した.65歳以上の高齢者においては,前期(1999~2005年)100名と,後期(2006~2011年)131名での比較検討も施行した.【成績】若年者群と比較して,高齢者では,1) ピロリ菌陽性潰瘍の比率低下,2) 女性比率の増加,3)入院時Hb値の低値,4) 重篤な基礎疾患合併率の増加,5)薬剤服用率(低用量アスピリン,抗血栓薬,ステロイド)の増加,等が特徴的であり,低用量アスピリン以外のNSAIDs服用率の差はなかった.81歳以上の高齢者でもこの傾向は同様であった.心疾患,脳血管疾患などの基礎疾患を有する患者が内服している内服薬が高齢者の潰瘍発症の危険因子になりえるかを多変量解析で解析した結果,高齢者の出血性潰瘍の最も重要な危険因子は低用量アスピリンであることが判明した.前期と後期で比較すると後期の高齢者出血性胃十二指腸潰瘍の特徴は,1)高齢者比率の増加,2)ピロリ菌陽性率の低下,3)低用量アスピリンの内服率の増加,であった.内視鏡的止血後の再出血率や1カ月以内の死亡率は,若年者と高齢者の間で有意な差はなかった.【結語】今回の結果は,高齢者の出血性胃十二指腸潰瘍患者に対して適切な止血処置を行えば,若年者同様に安全に治療を行うことが可能であることを示している.高齢者の出血性胃十二指腸潰瘍は時代とともに増加し,その発生原因がピロリ菌感染症から心疾患や脳血管疾患患者の伴うアスピリン服用に変化してきていることが判明した.
索引用語 出血性胃十二指腸潰瘍, 低用量アスピリン