セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害

タイトル 消S9-3追:

高齢者のNSAIDsによる上部消化管出血性潰瘍の検討

演者 岸野 真衣子(東京女子医大・消化器内科)
共同演者 中村 真一(東京女子医大・消化器内科), 白鳥 敬子(東京女子医大・消化器内科)
抄録 【目的】高齢化に伴い動脈硬化性疾患や整形外科領域の疾患が増加している.これにより低用量アスピリン(以下LDA)を含めたNSAIDsの使用も必然的に増加している.今回我々は高齢者のNSAIDs上部消化管出血性潰瘍について特徴や背景を考察することを目的とし検討した.【方法】1995年1月1日から2012年12月31日までに当科で内視鏡的止血術を要した上部消化管出血性潰瘍患者683例中,65歳以上で且つLDAを含めたNSAIDsを内服中の161例(男性111例,女性50例,平均年齢74.1歳)の病変部位,出血形態,治療後経過,NSAIDsの種類,Hp.感染,通院中の主たる科,併用薬剤について検討した.【結果】胃潰瘍129例(80.1%),十二指腸潰瘍26例(16.1%),吻合部潰瘍(3.7%)であった.出血形態はForrest IIaが93例(57.8%)と最も多かった.19例(11.8%)に追加治療を行い,うち3例(1.9%)は外科手術を要した.NSAIDsはLDAが104例(64.6%)と最も多く,ジクロフェナック,ロキソプロフェン,インドメサシンの順であった.Hp.感染を調べた82例中,陽性者は61例(74.4%)であった.他科通院中の153例中81例(52.9%)が循環器科に通院しており,続いて脳神経科,糖尿病科,整形外科,腎臓科,膠原病科の順であった.LDAとワーファリンの併用を28例(17.4%),クロピドグレルの併用を2例(1.2%)に認めた.胃薬の併用者は73例(45.3%)で,粘膜保護剤39例(24.2%),H2受容体拮抗薬23例(14.3%),PPI7例(4.3%),プロスタグランディン製剤4例(2.5%)であった.【結語】今回の検討ではLDA内服者が多く循環器科通院中の患者が半数以上であった.NSAIDsによる消化管傷害の中で最も多いのが上部消化管傷害であり心疾患の併存や高齢者の場合,出血を合併すると重篤化する可能性がある.当科では死亡例は認めなかったが約2%が外科手術となった.ガイドラインで推奨されているPPIや高用量H2受容体拮抗薬の併用が多くのNSAIDs使用者に行われることを望む.
索引用語 NSAIDs潰瘍, 出血性潰瘍