セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害

タイトル 内S9-5:

血清ペプシノーゲン値による低用量アスピリン胃粘膜傷害のリスク評価に関する検討

演者 飯島 克則(東北大・消化器内科)
共同演者 小池 智幸(東北大・消化器内科), 下瀬川 徹(東北大・消化器内科)
抄録 我々は,低用量アスピリン(LDA)による胃粘膜傷害の発生は胃酸分泌のレベルと関連し,低酸分泌者に比べ,高酸分泌症例では,高度の胃粘膜傷害の起きるリスクは10倍上昇することを報告した(JG 2010).しかし,胃酸分泌の測定は,汎用性に問題がある.一方,我々は,血清ペプシノーゲン値は,胃酸分泌と良好に相関し(JG 2005 & 2009),適切なcutoffを設定することで,低酸分泌,高酸分泌者を識別できることを報告した.今回,血清PG値で判定された高酸分泌状態がLDAによる胃粘膜傷害と関連があるかretrospectiveに解析した.【方法】対象は2008年~2012年に当大学病院消化器内科で内視鏡検査を受けた長期LDA内服患者90人(男性78名,平均年齢70±9歳).胃酸分泌抑制剤服用者,H. pylori除菌歴のあるものは除外した.胃粘膜障害の程度はmodified LANZA scoreを用い内視鏡的に評価し,scoreが4以上を高度胃粘膜障害ありとした.我々のこれまでの検討で,高酸分泌の識別に関しては,H. pylori陰性者では,PG I=50 ng/mlをcutoffとして,AUC=0.79,感度70.6%,特異度72.7%,一方,H. pylori陽性者では,PGI/II=3.3をcutoffとしてAUC=0.85,感度78.6%,特異度77.2%と良好に識別可能であることを報告した.今回このcutoffを用いて高酸分泌者を定義した.【結果】H. pylori感染,PG値をもとに32名が高酸分泌者,残りの58名が非高酸分泌者と判定された.各群での高度胃粘膜傷害の発生頻度は,非高酸分泌者で11/58 (19%),高酸分泌者で19/32 (59%)であり,有意差を認めた(P<0.01).非高酸分泌者の高度胃粘膜傷害の危険度を1.0とすると,高酸分泌者の危険度は6.4 (2.4-17.1)であった.【考察】簡便な血清PG値を用いてLDA胃粘膜傷害のリスク評価ができることが示唆された.LDA長期内服者でも潰瘍歴を持たない,いわゆる1次予防目的でのPPI投与の適否に関しては,いまだ結論が出ていない.この点で,血清PG値を用いたリスク層別化が有用かもしれない.
索引用語 血清ペプシノーゲン, アスピリン