セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害

タイトル 消S9-6:

NSAIDs起因性小腸粘膜傷害に対する治療とプロトンポンプ阻害薬内服の影響

演者 加藤 元嗣(北海道大病院・光学医療診療部)
共同演者 小野 尚子(北海道大病院・光学医療診療部), 坂本 直哉(北海道大・消化器内科)
抄録 【目的】超高齢社会を迎え,アスピリンやNSAIDを内服する患者が増加してきている.その中でNSAIDs起因性小腸傷害の実態が次第に明らかとなり,適切な治療戦略が課題である.また,NSAIDS起因性胃十二指腸潰瘍に対してプロトンポンプ阻害薬(PPI)による予防治療が保険適用となり,NSAIDs使用者におけるPPI内服が増えてきている.しかし,PPI内服は腸内細菌叢のdysbiosisを引き起こし,NSAIDs小腸傷害を増悪させる可能性が指摘されている.そこで,今回は,NSAIDs小腸傷害に対するレバミピドの効果を検討したPRIME試験のad hoc解析を行い,PPI内服の影響について検討した.【方法】本試験は多施設共同のプラセボコントロール二重盲検比較試験である.NSAIDまたはアスピリンを長期服用中で,小腸に潰瘍,びらん,発赤,点状出血,または絨毛欠損を認める被験者を対象とした.活動性の小腸出血が認められた被験者は除外した.被験者は無作為にレバミピド(300mg/日)群またはプラセボ群に割り振られ4週間服薬した.内服前と内服後4週間後に施行したカプセル内視鏡によって小腸病変を評価した.【結果】61例が登録され,プラセボ群(n=30)とレバミピド群(n=31)に振り分けられた.そのうちPPI内服者はプラセボ群12例とレバミピド群10例で全体の36%を占めた.粘膜欠損はレバミピド群で有意に改善し(absolute difference:-4.6 95%CI:-6.5--2.7 p<0.0001),NSAID,アスピリン,両者併用においても有意に改善した.PPI服用者と非服用者で比較すると,粘膜欠損の存在率は65%と61%,平均病変数は3.0±4.6と3.6±3.5で両群間に差がなかった.また,治療後の変化にいてもPPI服用の有無で差を認めなかった.【結語】PPI内服による小腸病変の増悪や治癒における影響は認めなかった.NSAIDs消化管病変の予防としてPPI+レバミピドの可能性が示唆された.
索引用語 NSAIDs, 小腸粘膜傷害