セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害

タイトル 内S9-7追:

NSAIDs長期使用時におけるPPI併用の問題点と対策

演者 倉本 貴典(大阪医大・2内科DELIMITER守口敬任会病院・消化器内科)
共同演者 小嶋 融一(大阪医大・2内科), 樋口 和秀(大阪医大・2内科)
抄録 【目的】NSAIDsは,胃のみならず小腸においても粘膜傷害を惹起することが知られているが,未だ明らかでない点が多い.現在,上部消化管の病変を抑制するためにPPIが第一選択に用いられる場合が多いが,Wallaceらにより,PPIはNSAIDsによる小腸粘膜傷害を逆に悪化させるとの報告がなされた.今回我々は,(1)上部消化管においてlow riskと考えられる健常ボランティアを対象として,PPIと防御因子増強剤それぞれ1剤で食道から小腸までに及ぼす影響について,短期(2週間),長期(10週間)の比較検討を行った.(2)PPIの種類および用量において,NSAIDsによる小腸粘膜傷害への影響が異なるかについてボランティを対象として検討した.
【方法】(1)ディクロフェナックとIrsogladineまたはOmeprazole10mg/dayを投与した2群で,上部内視鏡,カプセル内視鏡および便中カルプロテクチン測定にて食道,胃,十二指腸,小腸粘膜への影響を投与前,2週間後で比較検討した.さらに,6,10週目においてカプセルにて小腸を評価した.(2)OmeprazoleまたはLansoprazoleを通常量または倍量投与した群に分け,(1)と同様の短期投与での影響をみた.
【成績】(1)上部消化管粘膜傷害に関しては,2群で有意差はなかったが,小腸粘膜病変についてはIrsogladineで有意な抑制効果が見られた.6週目では,両群において小腸病変は減少傾向にあったが,10週目では,Omeprazole群ではさらなる改善は見られず,Irsogladineを投与することにより,病変は改善した.(2)Omeprazoleでは用量を増やしても悪化傾向はなく,Lansoprazoleは用量依存性に小腸粘膜病変の抑制効果がみられた.
【結論】上部消化管のlow risk群では,小腸を守れないPPIでは防御因子増強剤との併用投与が推奨されるが,効果のある防御因子増強剤では1剤で食道から小腸までを保護できる可能性が,またPPIの種類によっては,倍量投与により,小腸まで保護できる可能性が示唆された.
索引用語 NSAIDs, 小腸粘膜傷害