セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害

タイトル 消S9-8追:

COX-2選択性NSAIDsによる上部消化管障害のrisk factorの解析

演者 沢井 正佳(奈良県立医大・中央内視鏡・超音波部)
共同演者 山尾 純一(奈良県立医大・中央内視鏡・超音波部), 福井 博(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科)
抄録 【目的】COX-2選択性NSAIDs(COX-2阻害薬)による上部消化管(UGI)障害(びらん,潰瘍,)の実態を明らかにする【方法】2008年1月~2011年12月に当院でCOX-2阻害薬を1ヶ月以上投与され上部消化管内視鏡検査を施行された99例(男34例,女65例,年齢中央値70歳)を対象とした.背景因子,内視鏡所見,心血管障害の発生頻度を調査し,COX-2阻害薬投与例におけるUGI障害のrisk factorをlogistic回帰分析により検討した.【結果】COX-2阻害薬の内訳はメロキシカム46例,セレコキシブ40例,エトドラク13例であった.また重複を含むが,PSLが29%,非選択性NSAIDsが10%,抗血栓剤が8%で併用されており,86%に抗潰瘍薬(PPI30例,H2 blocker24例,防御系薬剤51例,PG製剤5例)が投与されていた.基礎疾患では関節リウマチが43例と最も多く,変形性関節症31例がこれに次いだ.また59%に併存疾患を認め,27%で H.pylori陽性であり,16%が潰瘍の既往を有していた.内視鏡所見の内訳は,胃びらん25例(25%),胃潰瘍3例(3%),十二指腸びらん6例(6%),十二指腸潰瘍3例(3%)(重複を含む)であり,UGI障害の発生率は27%であった.次に,COX-2阻害薬別に見たUGI障害の発生率に差はなかった.背景因子別にUGI障害の発生率を検討したところ抗潰瘍薬併用例(22%)は非併用例(57%)に比し,またPPI投与例(3%)は非投与例(38%)に比して有意に(それぞれp<0.05,p<0.001)UGI障害が低頻度であった.さらにUGI障害のrisk factorをlogistic回帰分析で検討したところ,PPI非投与(p<0.01)が選択された.またCOX-2阻害薬服用中に脳梗塞と急性心筋梗塞がそれぞれ2例発症し,心血管イベント発症率は4%であった.【結語】COX-2阻害薬を投与する際にもPPIの併用が上部消化管障害発生予防に必要であると思われた.
索引用語 COX-2選択性NSAIDs, 上部消化管障害