セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害

タイトル 内S9-9:

NSAIDs起因性小腸傷害および膜様狭窄の発症リスクと予防・治療,予後

演者 大宮 直木(藤田保健衛生大・消化管内科)
共同演者 中村 正直(名古屋大大学院・消化器内科学), 後藤 秀実(名古屋大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】近年,カプセル内視鏡(VCE)やダブルバルーン内視鏡(DBE)によりNSAIDs起因性小腸傷害(SBI)が的確に診断できるようになった.今回,SBIの発症リスクと予防・治療,予後について検討した.【方法】VCEまたはDBEを施行した1262人中,NSAIDs内服患者156人を対象とした.CYP2C9*2*3*13遺伝子多型はTaqManPCR法で解析した.【結果】NSAIDs内服156人中,SBIは31人(20%;障害群).障害群の検査契機は出血26人(全出血中3%),腸閉塞5人(全腸閉塞中3%).障害群,非障害群(125人,80%)間の多変量解析では年齢,PPI併用率,NSAIDs適応疾患,内服期間に有意差はなかったが,障害群で基礎疾患(肝・心・腎疾患)が多く(オッズ比5.0,P=0.004),ジクロフェナク,オキシカム系の使用頻度が高かった(オッズ比5.5,P=0.002).また,アスピリン単独によるSBI頻度は他のNSAIDsより低く (オッズ比0.3,P=0.016),セレコキシブ起因性SBIはなかった.内視鏡所見ではアスピリン単独は糜爛・小潰瘍が多いのに比し,他のNSAIDsでは輪状潰瘍,膜様狭窄が多かった (P<0.0001).発生部位に有意差はなかった.DBE通過不能な膜様狭窄7人のオキシカム系の使用頻度 (71%,P=0.001),CYP2C9*3多型頻度(29%,P=0.018)は有意に高かった.膜様狭窄数は*3/*3が6個,*1/*3が2個で,*1/*1はすべて1個であった.SBI全体でのCYP2C9*3多型の関与はなく,CYP2C9*2*13多型は認めなかった.SBI発症前の胃粘膜防御剤併用率は障害群で35%,非障害群で27%と有意差はなかった.SBI発症後の治療はNSAIDs中止が74%,NSAIDs変更が13%,ミソプロストール併用が19%,膜様狭窄に対するDBE下バルーン拡張術が19%,外科切除が6%で,その後出血,腸閉塞の再発は認めていない(観察期間中央値:38ヶ月,6-102ヶ月).【結論】NSAIDs起因性SBIは基礎疾患保有者に好発し,ジクロフェナク,オキシカム系に起因する頻度が多かった.また,膜様狭窄はオキシカム系,CYP2C9*3多型の宿主要因が関係し,長期間のNSAIDs血中濃度の上昇が原因と推測された.
索引用語 NSAIDs, 小腸粘膜傷害