セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害

タイトル 内S9-12:

NSAIDs起因性小腸・大腸病変症例の臨床的検討

演者 蔵原 晃一(松山赤十字病院・胃腸センター(消化器科))
共同演者 松本 主之(九州大・病態機能内科), 川崎 啓祐(松山赤十字病院・胃腸センター(消化器科))
抄録 【目的】NSAIDs起因性腸病変の臨床的特徴を明らかにすること.【方法】1996年以降の最近18年間に当院および協力大学病態機能内科学関連病院においてNSAIDs起因性小腸病変ないし大腸病変と診断した症例を対象とし,その臨床的特徴を遡及的に検討した.診断基準は,1. 小腸病変ないし大腸病変の確認,2. NSAIDs(低用量アスピリンを含む)の使用歴の確認,3. 他疾患の除外(病理組織学的と細菌学的診断を必須とする),4. NSAIDsの使用中止のみによる病変の治癒軽快を内視鏡を用いて確認することとし,非手術例はこれらの4項目の全てを満たした全大腸内視鏡ないしバルーン小腸内視鏡施行例を,手術例は1~3を満たした症例を本症と診断した.【成績】計78例(平均69.6歳, 男性34例,女性44例)が診断基準を満たしていた.使用NSAIDsを検討すると78例中14例で低用量アスピリンが,計68例で非アスピリンNSAIDsが使用されていた.78例は,小腸を病変の主座とする36例と大腸を主座とする42例に分類され,前者は全例が多発性潰瘍性病変(多発性粘膜欠損)の所見を呈したのに対し,後者は内視鏡所見から限局性の潰瘍性病変を呈する潰瘍型32例とびまん性の腸炎像を認める大腸炎型10例の2型に分類された.膜様狭窄合併例は小腸5例,大腸1例の計6例で,2例(ともに小腸)で内視鏡的バルーン拡張術,3例(全て小腸)で外科的小腸切除術が施行されていた.また内視鏡的止血術は5例(小腸4例,大腸1例)で施行されていた.その他,穿孔性小腸潰瘍のため4例で小腸切除術が,虫垂出血のために1例で虫垂切除術が緊急的に施行されていた.非手術例では小腸病変,大腸病変ともにNSAIDsの使用中止2-10週後に施行した内視鏡検査により全例で治癒傾向を確認した.病理組織学的には78例中32例(41%)でアポトーシス小体の増加を認めた.【結論】NSAIDs起因性腸病変78症例中7例で内視鏡治療,9例で外科的手術が施行されていた.本症は時に重篤な病態を合併する可能性がある.
索引用語 NSAIDs, 腸病変