セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高齢化社会におけるNSAIDs消化管障害

タイトル 内S9-13追:

当院でのNSAIDsの処方状況と下部消化管出血との関係

演者 進士 明宏(諏訪赤十字病院・消化器科)
共同演者 武川 建二(諏訪赤十字病院・消化器科), 太田 裕志(諏訪赤十字病院・消化器科)
抄録 方法 1. 2010年1月~2012年12月までの当院受診患者を対象とし,電子カルテからNSAIDs(バイアスピリンを含む)の処方患者を抽出し,処方状況を確認した.2. 同時期に血便を主訴に当院で緊急下部消化管内視鏡検査を施行した症例について,高齢者(65歳以上)と非高齢者に分け,内服状況(A群:抗凝固・抗血小板剤・NSAIDsの服用なし,B群:COX選択性のないNSAIDs単独,C群:COX2選択製剤単独,D群:NSAIDs2剤併用群,E:抗凝固・抗血小板剤単独群,F:抗凝固・抗血小板剤プラスNSAIDs併用群),止血処置の是非(Forrest Iおよび2aまでを処置要),NSAIDs服用者における制酸剤の併用状況などを比較検討した.止血処置を要するかのリスク因子について統計学的に検討した.結果 1. NSAIDs処方患者数は15227名で,COX2選択性NSAIDs使用率は13.5%であった.年次別では2010年が患者総数5581人,2011年同6360人,2012年同6756人,2010年COX2使用率9.2%,2011年同使用率12.2%,2012年同使用率16.3%と,COX2選択製剤の使用頻度増が顕著であった.2. 対象例は180例でNSAIDs処方者は47例(26.1%;B群29,C群5,D群3,F群10例)であった.疾患は憩室出血が44例,虚血性腸炎が61例,大腸癌13例,痔出血13例,出血性直腸潰瘍6例などであった.高齢者は116例,非高齢者は64例で,止血処置要者は,高齢者29例(25%),非高齢者14例(21.8%)であった.止血処置のリスク因子の検討では,NSAIDsや,抗凝固・抗血小板剤の内服はリスクを上げる傾向にはあるものは有意なリスク因子ではなく(NSAISs:オッズ比 1.15,抗凝固・抗血小板薬:オッズ比 3.04),腹痛がないことが最も大きなリスク因子(同7.78)であった.またNSAIDs服用者の制酸剤併用は止血処置リスクを下げなかった.結論 NSAIDs処方人口に比べれば,止血処置が必要となる下部消化管出血は低率(19例/15227 = 0.1%)で,COX選択性に関わらず認められたが,リスク因子とはいえなかった.
索引用語 NSAIDs, 下部消化管出血