セッション情報 シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

再生医学研究の現状と展望

タイトル 消S10-1:

脂肪組織由来間質細胞を用いた肝硬変に対する肝再生療法実用化への基礎的検討

演者 酒井 佳夫(金沢大・消化器内科)
共同演者 関 晃裕(金沢大・消化器内科), 金子 周一(金沢大・消化器内科)
抄録 【目的】生体内に元来存在する間葉系幹細胞は多分化能,臓器修復再生能を有し,再生療法開発への応用が期待される.脂肪組織は採取アクセスがよく,かつ間質には間葉系幹細胞が豊富に含まれる.今回,マウス肝硬変モデルを用いて,脂肪組織由来間質細胞の経脾経門脈的投与による肝再生療法の有用性に関する基礎的検討を行った.【方法】脂肪組織由来間質細胞は,GFPトランスジェニックマウスの皮下脂肪組織より間質細胞を分離,培養した.C57Bl/6マウス(8週齢,♀)に,高脂肪動脈硬化食を32~40週給餌し,非アルコール性脂肪肝炎,肝硬変マウスモデルを作成,脂肪組織由来間質細胞を経脾的に投与し,治療効果を検討した.【成績】分離,培養した脂肪組織由来間質細胞の間葉系幹細胞マーカー発現については,90%以上がCD90陽性,20%強がCD105陽性であった.32週間高脂肪動脈硬化食を投与した肝硬変マウスに対し,1x10^5個の脂肪組織由来間質細胞を経脾的に隔週で2回投与した.投与終了2週後の肝組織において,線維化領域の減少,またα-SMA陽性細胞数が減少した.肝内炎症細胞についてはCD11b陽性細胞数,F4/80陽性細胞数が減少した.肝実質細胞のアルブミン,α-フェトプロテインの発現は,コントロールと比較して有意に上昇した.40週間高脂肪動脈硬化食を投与した肝硬変マウスに対し,1x10^5個の脂肪組織由来間質細胞を経脾的に隔週で2回投与し,その2週後の肝組織の遺伝子発現をDNAマイクロアレイにて解析したところ,PBS投与群に比較して,脂肪組織由来間質細胞投与群では,797個の遺伝子が発現亢進,452個の遺伝子が発現減弱し,亢進した遺伝子はCytoskeleton,Developmentに関連し,減弱した遺伝子は,炎症,免疫応答に関連した.【結論】脂肪組織由来間質細胞を経脾的投与した肝硬変マウスにおいて,炎症,線維化の軽減,および肝予備能改善を認めた.脂肪組織由来間質細胞を用いた肝硬変に対する肝再生療法開発の可能性が示唆された.
索引用語 脂肪組織由来間質細胞, 肝再生療法