セッション情報 シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

再生医学研究の現状と展望

タイトル 肝S10-2:

ヒト初代肝細胞/線維芽細胞複合シートが創造する第二の肝臓

演者 堺 裕輔(長崎大大学院・移植・消化器外科学)
共同演者 高槻 光寿(長崎大大学院・移植・消化器外科学), 江口 晋(長崎大大学院・移植・消化器外科学)
抄録 【目的】肝硬変の重症例や遺伝性肝疾患に対しては肝移植が唯一の根治療法であるが,日本での肝移植は生体部分肝移植が大半を占める.低侵襲な医療への転換が期待されているものの,代替法である肝細胞移植は生着細胞数が少なく,依然として肝再生技術として確立されていない.本研究では,新しい肝細胞移植法として細胞シート工学に着目し,ヒト初代肝細胞/線維芽細胞複合シートによる異所性肝組織構築を目的とした.
【方法】肝腫瘍等で外科的に切除した肝組織の非腫瘍部から,ヒト初代肝細胞を調製した.FBSでコーティングした温度応答性培養皿(UpCell; セルシード社)に,単離したヒト初代肝細胞を1.14×105 cells/cm2で播種した(HuHep).さらに,コンフルエントにしたTIG-118細胞(ヒト皮膚由来線維芽細胞)上にも同様の密度で肝細胞を播種した(TIG+HuHep).培養4日目に細胞シートを免疫不全マウス(NOD SCID mouse)の皮下に移植し,移植部位の組織および血清中のヒトタンパク質量を評価した.
【結果】皮下組織内に毛細血管が新生した肝細胞組織体が構築され,アルブミンやグリコーゲンの貯蔵が観察された.細胞シート移植2週間後のマウス血清中のヒトα1アンチトリプシン量は,HuHep,TIG+HuHepでそれぞれ12±17,633±249 ng/mouseであり,ヒトアルブミンも同様の傾向であった.
【考察】マウス皮下への肝細胞移植効率はTIG+HuHepシート移植群で有意に高値であり,線維芽細胞による増殖因子等の分泌により血管新生され,肝細胞の生着が促されたためであると考えられる.
【結語】線維芽細胞/肝細胞シートは,皮下において肝細胞組織の構築に優れており,良好な肝特異機能を発現した.本技術は,肝移植に代わる新しい細胞移植法として期待でき,遺伝性肝疾患などに対する治療効果を実証したい.
索引用語 細胞シート, 肝細胞